オイカワ bellさん、直球で来ると読んで、ぼくは飛び道具と変化球で攻めてみました。
bellbell ですねー、なかなか・・・。
オイカワ 「穴」と「抵抗」ははずせませんね。bellさんが絶対入れてくれると思ったから、ぼくは安心してはずしました。
bellbell あのー、「大脱走」入ってなくていいんでしょうか(笑)
オイカワ どうなんでしょう。「パピヨン」と「大いなる幻影」と「第十七捕虜収容所」も入らなかったですねえ。
bellbell ビリー・ワイルダーは私、好きだったんですけど観直したら今ひとつ雰囲気にノレなくって。
オイカワ 「パピヨン」は?
bellbell ええ。好きなのですが、「暴力脱獄」と「アルカトラズ・・・」ほどのインパクトがなかったのです。私には。
オイカワ bellさんので意外だったのは、「セブンビューティーズ」と「ダウン・バイ・ロー」です。ぼく「セブンビューティーズ」見てないです。この作品について熱弁してください。
bellbell これは、自分でも意外に思うのです。刑務所、収容所映画って、主人公がクールでマッチョなヒーローであることが多いですよね?
オイカワ そうですね。基本的にはどう脱出するかとか、どう脱獄するとかね、まあ、そういう話が多いじゃないですか。そうするとやっぱり男臭くはなりますな。
bellbell このジャンカルロ・ジャンニーニ、ダメな男なんですよ。ダテ男を気取っていて、身を持ち崩し、果ては強制収容所にって話なんです。
オイカワ ああ、軟派なんですね。ダメ男お好きですか?
bellbell 母性をくすぐるところが・・・ (笑)
オイカワ そうすると、脱獄系映画の主人公は分が悪いな。ジャンカルロ・ジャンニーニはいい役者ですよね。
bellbell はい。この映画で”男”を武器にナチス相手に生き延びようとしたジャンニーニ、見事にその野心を打ち砕かれるんです。で、戦後自宅に戻った時、変貌したジャンニーニの顔のアップで終わる映画なのです。
オイカワ ああ、なるほど。男を武器にということは、収容所の所長はひょっとして女ですか?
bellbell そそ。太った冷酷そうな色気の無い親衛隊です。
オイカワ 収容所で彼にとって、かなり辛いことがあるってことですね。辛いのは当たり前だけど。
bellbell そうなんです。リナ・ウェルトミューラーってフェリーニの下で働いてた人で、フェリーニっぽいのですが、残酷な展開がお好きなようで。
オイカワ 「流されて」の監督ですよね。あれも、ジャンカルロ・ジャンニーニじゃなかったでしたっけ。
bellbell そうです。あと、「ブラザー・サン シスター・ムーン」の脚本も書いていますね。
オイカワ あ、そうなんだ。知らなかった。「愛の嵐」も女性監督ですね。リリアーナ・カバーニ。
bellbell ええ。これまた女性監督らしい映画ですよね。”純愛”を感じました(笑)
オイカワ これ、2回見てるけど、最後に見たのもう20年近く前かもしれない。今見たら、印象違うと思うな。以前、見たときは、主演の2人は凄いな、と思いつつも今ひとつ乗れなかった。っていうか、たぶんわからなかったんだと思います。
bellbell 私も自分のベスト10って、ほとんど20歳前に観た作品ばかりなんです。今回見直してみて、ダーク・ボガードのピュアな愛情に感情移入しました (笑)。
オイカワ あれ、ピュアだったんですね。わかんなかったな、当時は。20歳前に見て、この映画わかりました? ぼくはシャーロット・ランプリングの痩せた体ばっかり見てたのかもなあ(笑)。ちょっと衝撃でしたね、あの体は。
bellbell はは、骨が浮き出ていてね。あの、オイカワさんにお聞きしたいんですが・・・。
オイカワ はい、なんなりと。
bellbell 自分がモノにした少女を永遠に自分の元に置いておきたいという、男性の願望を感じたのですが、あの映画。
オイカワ 俺にはないな、その願望は。って、俺のことじゃないですよね。いやあ、そこは見直さないと何とも言えないけど、もしそうだとしたら、それは凄く観念的なものですよね。リリアーナ・カバーニの男性観の表れのような気もします。
bellbell ですね。ランプリングだって辛かったはずの昔に戻ってしまう。最初の男が忘れられないってコトでしょうか。
オイカワ 戦争という特殊な状況によって結びついた男女が、再会したらどうなる、という話ですよね。難しいテーマだと思いましたね。
オイカワ えー、私のベストはですね、「刑務所&収容所」が1ヶ所でも出てこれば良しとしました、それがインパクトさえあればOK、と。まあ、ちゃんとした刑務所、収容所ものも選んではいますけどね。
bellbell 私、オイカワさんのベストの半分観てません。傑作ってことは知っているのですが・・・。「白熱」ってどんなですか?
オイカワ 「白熱」はですね、刑務所シーンはそんなに長くはないんですけど、とにかく強烈なんですね。演出とジェームズ・キャグニーのキャラクターが。
bellbell キャグニー・・・。今こんな俳優、いませんよね。
オイカワ いませんね。これは1949年の作品なんで、キャグニーはたぶん50歳くらいだと思うんですけど、ヒステリックなマザコンギャングなんですよ。で、このキャラ作りのアイデアをキャグニー自身がかなり出したらしいんですよ。
bellbell あの顔でマザコン・・・ぴったりじゃないですか(笑)
オイカワ そう、ピッタリなんです(笑)。気持ち悪いんですよ。頭痛持ちで、時たま発作を起こすんですが、母親に肩をもんでもらったりね。母親のひざの上に子供みたいに乗ったり。刑務所の中で母親の死を知って半狂乱になるシーンは、この映画の最も強烈なシーンでしょうね。
bellbell 今だったら肉体派アクションヒーローや、サタデー・ナイト・ライブ出身のコメディアンが演じそうなキャラですね。当時としてはすごく斬新だったと思います。
オイカワ あ、そうですね。たぶん拒否反応もあったと思いますよ。この後、キャグニーはこの手のエキセントリックなギャング役を全く演じていないと思います。生きてたらジョン・ベルーシができたかもしれない。ジム・キャリーもできるだろうけど、ちょっとカッコ良すぎるからね。
bellbell キャグニーっていいですよね。やっぱり特異なキャラクターだって思います。映画はやっぱり男らしい映画なんですか?
オイカワ それがね、あまり男らしいっていう印象が持てない。演出自体はスピード感あるし、すごいキレがいいんだけど、やっぱり主人公のキャラクターが異様なので、男らしさは感じられないかもしれないです。
bellbell ラオール・ウォルシュって観たことないんですけど、男らしい映画ってイメージがありました。
オイカワ 演出自体は勢いあるんで、男らしいと言っても間違いじゃないですよ。ぼくも、そんなに見てるわけじゃないけど。
bellbell 「白熱」、絶対観ます。
bellbell 戦前のアメリカ映画で、刑務所や収容所を舞台にした映画ってあまりないんでしょうね。ヨーロッパにおいてもそうでしょうか・・・。圧倒的に戦後にこの手のジャンルが作られたんでしょう。
オイカワ 少なくても収容所はそうですよね。やっぱりゲットー以降でしょう。捕虜収容所ものは、戦前のヨーロッパでは、ジャン・ルノワールの「大いなる幻影」が一応脱走ものです。これを最初入れようとも思ってました。
bellbell これは有名ですからね。私観ていないのですが・・・。やはり男の友情を軸にした作品ですよね?
オイカワ そうですね、ジャン・ギャバンです。ルノワールの名作ですね。ただ、ルノワールの中で一番好きかと聞かれれば、迷うことなく違うと言います(笑)
bellbell あらすじを読んだだけですからなんとも言えないのですが、他のルノワールの作品とは少し趣が違う感じがします。「ゲームの規則」とか「黄金の馬車」とか「草の上の昼食」とか・・・。
オイカワ そうです、その通りです。今、bellさんがあげた3本がぼくのルノワールベスト3です。
bellbell 光栄です。
オイカワ そういえば、bellさんがベストに入れた「穴」の監督、ジャック・ベッケルはルノワールの助監督をやってたことあるんですよね。それから、「抵抗」の監督であるブレッソンの助監督もやっていた。ルノワールとブレッソンの助監督やってたって、史上最強の助監督じゃないですかね。
bellbell 今言及しようと思っていました (笑)。やっぱりルノワールの影響があるんですよね。
オイカワ あると思うけど、「穴」はブレッソンの影響の方が強いですよね。
bellbell そうですねー・・・、私若い頃、この2作品を観たのですが、ホントびっくりしたんです。
オイカワ どこにビックリしました?
bellbell まず、「抵抗」。初めて観たブレッソンでしたが、”こんな映画があるんだー”って。テレビ放映のハリウッド映画に慣れ親しんでいましたから。
オイカワ 見ようと思ったきっかけは何かありました?
bellbell モロ父親の影響です。フランスかぶれでしたから(笑)
オイカワ そうですか。いいお父さんですね。最初に見て、ビックリして、その後は? いや、ハリウッド映画に慣れちゃってたら、つまんないとか思いませんでした?
bellbell いや、逆に面白かったんです。なんだかわかんないけど突き詰めた感じの登場人物の表情とか、淡白なセリフとか、じーっと画面を見つめる感覚が好きで。
オイカワ ぼくは、正直、ちょっと時間かかりました。だけど、だんだん分かってくるっていうのじゃなくて、ある日突然、これイイと思う瞬間が来るんですよ。bellさんが言うように、じーっと見つめる感覚だな。うまく言えないけど、そこに何かモノや人が“在る”っていう感覚ですね。そういう感覚はブレッソンの映画を見るまでは持ったことがなかったかもしれない。1度、その感覚、むしろ知覚って言った方がいいかもしれないけど、それを知ると、あとはたいていの映画はつまんなくなっちゃった。ブレッソン以前以後で、映画の価値判断がかなり変わりましたよ。
bellbell 一瞬たりとも見逃してはいけない、って緊張感、ブレッソン特有ですよね。思いっきり緊張感を上げておいて、 ”あれ?” なんて肩透かしを食らったりもします。「抵抗」でも、ラスト近く、さあ行け! ってシーンで ”・・・・・・やはり勇気がない” ってモノローグがあって、しばらく間をおいたりしちゃう。そんなところにすごく人間らしさを感じました。
オイカワ 「穴」との出会いは?
bellbell これも父親ですねー。デュヴィヴィエなんかも好きだったのですけど、ベッケルも大好きな人で。
オイカワ ベッケル好きの父親ってなかなかいないですよ。そういう環境うらやましいですねえ。この「穴」は、ベッケルの演出はもちろんのこと、何と言っても、原作・脚本がジョゼ・ジョバンニですからね。ホンモノのギャングですからねえ。
bellbell そうそう、「抵抗」もそうなんですが、実話をもとに作られた映画です。ブレッソンに関しては、 ”こんな映画の作り方もある” ってことを皆さんに知っていただきたいのですが、この「穴」は、今の若い方が観ても面白い映画だと思うのです。
オイカワ これは、面白いですよ。でもね、くだらないことだけど、「穴」見て思ったことなんですが、フランスの囚人って私服OKなのかって。
bellbell 確かになんかフリーな雰囲気漂っています (笑)。看守に ”おい、お前服のまま寝るのか” って。みんな私服のまま寝てたりする。穴掘っているからなんですけどね (笑)
オイカワ ムショのメシも結構まともな感じだし。日本の70年代東映ヤクザ映画の臭いメシとは大違い。
bellbell みんな送ってもらった栗のジャムとか魚の燻製とかおいしそうに食べているんですよー。
オイカワ そうなんですよ。そんなんありかよ〜。松方弘樹なんて、独居房の中で後ろ手に縛られて、残飯を犬食いしてましたよ。
bellbell 日本の刑務所映画陰湿ですよねー。でね、「穴」で信じられないのが、一番最初に床に穴を開けるとき。ガーン、ガーン、ガァーン、ってすんごい音させて掘るんですよぉ。
オイカワ 丸聞こえですわ。ウォルシュの「白熱」では、読唇術ができる男が監獄にいるから、口を動かさないようにしゃべるシーンがあったぐらいなのにー。
bellbell あはは。そうなんですけど、その穴を開けるシーン、ワンカットで撮っているんですよ。穴が開くまで、すんごい音させながらずーっとカメラが追ってるんです。そこのところにヤル気を感じました。
オイカワ 確かにそうでした。ワンカットでしたね。仲間の間で、だんだん連帯感が出てくるんでしたよね。
bellbell そうなんです。5人って人数的に多い気がするんですが、まとまってくるんですね。で、驚愕のラストに至るわけですが、これ観て、ほんとに ”あっ” と思って欲しいです。
オイカワ そうですね。ここでは言わない方がいいですね、ラストは。
bellbell はい。言えません。
bellbell オイカワさんはヨーロッパでは「パサジェルカ」ですか。私観ていないんですけど、ポーランドですか?
オイカワ そうです、ポーランドです。収容所映画はこれ1本でいいかと思うくらいの未完の傑作です。監督のアンジェイ・ムンクはこの映画の撮影中に交通事故で死んじゃったんですよ。それで、ムンクの遺志を継いだ仲間たちが、スチール写真で残りを構成して完成させたんです。ムンクはラストをどうするかという話を周囲に全く話してなかったらしくて、作品自体もそういう意味ではオチ無しと言っていいかもしれません。
bellbell スチールで残りを作っちゃったんですか。でもどうしても遺志を継ぎたかったんでしょうね。
オイカワ そうだと思います。上映時間短いんです。未完だから。1時間ちょっと。でも、これを見たら、「シンドラーのリスト」なんか吹っ飛びます。ガス室が日常の風景になってしまったような収容所内の映像がとにかく鮮烈で。静かなんですけどね。あとそこで生きる人たちの顔も忘れらないです。夢に出てくるほどです。
bellbell 収容所の映画、いいのないです。ワイダの「コルチャック先生」も、「ライフ・イズ・ビューティフル」も、事実を目の前にしたら感動には程遠い映画だと思います。結局今でもホロコーストについて、歴史的に結論がつけられないでいる状況なのかと感じちゃいます。
オイカワ そう簡単に結論はつけられないと思います。あり得ない!と思いますが、それをやったのは同じ人間なわけです。
bellbell 被害者、ユダヤ人の立場からの映画が多いですから。映画産業のユダヤ人の影響力がとやかく言われますが、加害者の観点の映画がもっとあってもいいように思うのですが。
オイカワ 「パサジェルカ」は加害者の視点からも描いてます。話の構造的には、ある意味「愛の嵐」に似ている部分もあるのかな。
bellbell 「愛の嵐」はやや雰囲気重視ですけどね。「es」はご覧になりました?あの映画はドイツ映画ですが、統制する側の心理もテーマのひとつでした。
オイカワ あ、見てないです。
bellbell ナチスの残虐行為に対して、ドイツ人たちの模索している答えをひとつ見たような気がしました。
オイカワ そうですか。それはぜひ見てみます。ウディ・アレンの「カメレオンマン」は見ました?
bellbell はい。好きです。
オイカワ ユダヤ人がユダヤ人を相対化したという爽快感がありました。映画に出てくるユダヤ人は迫害されているか、金持ちか、というステレオタイプがありますよね。それとは違うユダヤ人を、笑わせつつ見せていた。世の中そのものが収容所みたいなもんだから過剰に適合するんだ、と。うがった見方かもしれないけど。
bellbell ウディ・アレンがユダヤ人代表って言ったら反対するユダヤ人が大勢いるでしょうけどね (笑)。最近ホロコーストでアカデミー賞って風潮があるようなので少し毒づいてみました。
オイカワ あはは、確かにそうだ。
bellbell ポランスキーまで、って感じです。
オイカワ トリュフォーの「私のように美しい娘」は、決して傑作とは言えませんが、大好きなんで入れました。一応、女囚ものですから。
bellbell ええ。目からウロコです・・・。それもアリですね。
オイカワ 刑務所という密閉空間はあまり重要な役割を担ってないけど、まあいいかな、と。好きだから(笑)。トリュフォーは今後もバシバシ入れていきますよー!
bellbell オイカワさん、トリュフォーお好きなのですか?初めて知りました。
オイカワ 大好きですよ。全作品見てますし。
bellbell トリュフォーはいづれ必ず出てくるとは思っていましたが・・・。
オイカワ そうですよ。もうトリュフォーの「柔らかい肌」のことを話し始めたら止まりませんよ、ぼくは。
bellbell やっぱりトリュフォー好きって永遠に存在するのでしょうね・・・ (笑)
オイカワ この世に映画と女がある限り永遠に存在します(笑)
bellbell 「私のように・・・」は女囚の伝記を作る話でしたっけ?
オイカワ えーと、堅物な社会学者が女性と犯罪の関係か何かの本を書くため、主人公で女囚のベルナデッド・ラフォンに取材をして、彼女の話が回想で入るって構成ですね。
bellbell なんとなく思い出しました。女性のタイプライターがいてね。
オイカワ 女性のタイプライターいたっけ? 忘れてる。俺の記憶あてになんないなあ。
bellbell ええ、そこから話が始まるんじゃなかったかな・・・。
オイカワ ああ、社会学者の助手みたいな人だっけ?
bellbell ええ、硬そうな女性。彼女はラフォンを認めないんでしたよね。
オイカワ そうか。そう言われるとそうだったような気が。実はこの作品、今回見直してないんですよ。
bellbell でも女囚ものってあんまりないですから・・・。トリュフォーがこういう映画を作っていたってことが面白いと思うんです。
オイカワ そうですね。でも結局トリュフォーなんですよ。社会学者はベルナデッド・ラフォンに惚れちゃって、親切にしたはいいけどハメられちゃって。女は強いんです、トリュフォーの映画では。
bellbell ですね、結局はトリュフォー、そういう結果なんですよねー。でもそこらへんに彼の愛嬌があるというか・・・。どんな悪女でもハメられちゃった男は幸せっていうのでしょうか (笑)
オイカワ そんなことないでしょう。それは違いますよbellさん。幸せは一瞬だけで、しかもあとから凄く後悔するんです。ぼくがムキになることもないんだけど(笑)。まあ、一瞬でも幸せは幸せですけど・・・。男のバカなところをトリュフォーほど描いた作家はいないなあ。
bellbell でもその一瞬の幸せのためだけに燃え尽きるような・・・。そんな男女がトリュフォーの映画には多いような気がするのですけど。
オイカワ 確かにそうですね。「隣の女」なんて最たるものでね。
bellbell 「突然炎のごとく」もそうじゃないでしょうか。
オイカワ そうですね。あんたら恋愛ばっかりで一生終えるのかって感じですよね。
bellbell あははは。そうそう。そーなんです。トリュフォーの映画って。
オイカワ 「羊たちの沈黙」は90年代の作品ということで、古典とか名作と言っていいのかどうか迷った部分はありました。90年代のアメリカ映画って、このジャンルの作品、なぜか多いですよね。刑務所ものが非常に多いじゃないですか。「ショーシャンクの空に」から「グリーンマイル」に至るまで。「スリーパーズ」「デッドマン・ウォーキング」、それから結構いい出来だった「告発」もそうですね。
bellbell ええ、私も最近の映画に言及しなくちゃ、って思っていたんです。で、自分のベストの中で「カッコーの巣の上で」を取り上げたのです。今の若い人「ショーシャンクの空に」を好きな人多いですよね?
オイカワ 若い人に限らず多いですよ。なんでやねん!って思うんですけど。
bellbell ええ。この映画を好きっていうのと同じように、私たちの世代の人で「カッコーの巣の上で」を好きな人も多いような気がしたのです。
オイカワ でも「ショーシャンクの空に」ほどはいないでしょう。
bellbell そうなんでしょうか・・・。 抑圧された社会の中での ”自由のシンボル” みたいな意味合いの映画ってことですごく共通性を感じたのです。
オイカワ きっとそうだと思いますよ。90年代にこれだけこの手の作品が多いということは、なにか理由があると思う。ぼく自身は「カッコーの巣の上で」はそれほど乗れなかった映画だけど、たとえば「ショーシャンクの空に」を見ると、これだったら「カッコーの巣の上」で十分じゃん、と思ってしまう。
bellbell ええ、私も作品的には「カッコー・・・」はそれほどでもないとは思うのですが、それまでの刑務所物にはなかった魂の開放・・・この映画はその点を繊細に描いて、90年代の映画に影響を与えたように思っています。
オイカワ やっぱりジャック・ニコルスンの相手にあのインディアンを設定したのが大きいと思うんですよ。イノセントっていうんですかね。90年代の作品への影響っていうのは、今bellさんに言われて、あ、なるほどって思ったんですけど、社会的背景も関係してるんじゃないですかね。つまり戦争の影響ですね。70年代中盤はベトナム戦争終結後で、90年代の一連の作品は、湾岸戦争後ですよね。戦争によってやはり何らかの内面的な後遺症があって、そこから開放されたいというのがあるんじゃないかな、と。そのあたりに共通性があるのかもしれない、と今ふと思いました。直感に過ぎませんが。
bellbell ええ。私がなんとなく感じたのもそこら辺だと思うのです。あのインディアン、最初は耳が聞こえないフリをしていて ”不服従” の象徴みたいなんですね。そこからニコルスン扮するマクマフィーと心を通じ合わせていく。で、ラストではマクマフィーの自由への欲求を自分で受け継ぐ。人間が本来求めている自由への欲求をピュアな形で示したのがこの映画だと思いました。この欲求はおそらくこれからも高まっていくと思います。
オイカワ イラク戦争後ってことで、需要出てくるでしょうね。アメリカは戦争やってる時はイケイケドンドンだけど、終わった後にこういう形で内省するんですよね。
bellbell そうですねー・・・。「ショーシャンク・・・」「グリーン・マイル」はキング原作ですが、今後どういう形で受け継がれるか、ですね。
オイカワ いや、ぼく自身はあんまり受け継がれてほしくない(笑)。それが実感です。「ショーシャンク〜」「グリーンマイル」などへのアンチのつもりで、ぼくは「羊たちの沈黙」を入れたんです。90年代以降の刑務所ものはたぶん「ショーシャンク〜」に代表されると思うんですが、とにかく感動させようと一生懸命じゃないですか。それが嫌だった。その手の一生懸命さとは無縁の「羊たちの沈黙」の清々しさに1票を投じようと。単にひねくれてるだけですかね。
bellbell 私も「羊・・・」は大好きなのですけど、このジャンルに挙げるのは思いつきませんでした (笑)。
オイカワ ええと、実は収容所もので、まず最初に思いついたのが「最前線物語」のラストの方に出てくる、収容所のエピソードなんです。
bellbell ええ、あの映画大好きです。後半なんともリリカルで。
オイカワ あの収容所はたぶんチェコだったと思うんですけど、リー・マーヴィン率いる第1歩兵部隊が到着すると、非常に静かなんですね。人の気配が無い。それでマーク・ハミルたちが死体を焼く焼却炉をひとつひとつ開けていくんです。するとその中に、ナチスの残党が隠れている。中は暗いので目だけが光ってるんです。そいつに向けて、マーク・ハミルが銃弾を撃ち込むんですが、その時の音ですね。連射するんじゃなくて、あくまでも一発一発ゆっくりと同じリズムで撃ち込む。それだけで、彼のナチスへの怒りっていうんですかね、そういうものを表現していた。凄いと思いました。
bellbell マーク・ハミル!出てましたね。私この映画はだいぶ前に観てそれきりなのですが・・・。心に残るラスト・シーンのベストを作ったらこの映画は是非入れたいです。
オイカワ でしょ? 収容所で生き残っていたやせ細った少年とリー・マーヴィンのエピソードなんか、もう泣けて泣けて。スクリーンが滲んで見えませんでしたよ(笑)。あの少年がリー・マーヴィンに肩車されて、微笑みながらゆーっくりと崩れるように死ぬんですね。川のほとりをリー・マーヴィンが歩きながらね。少年が死んだのに気付いたのに歩みを止めずに、歩くところをトラックバックで捉え続けるシーン。思い出しても泣けますよ(笑)。
bellbell ・・・・・・。いいです。ほんとこのラストシーンはステキです。絵になってます。
オイカワ 今回、きっとbellさんなら入れてくれるだろうと信じて、ぼくは入れなかった作品が4本ありまして、それは「穴」「抵抗」、そして「暴力脱獄」と「アルカトラズからの脱出」なんです。
bellbell これは定番ですねー。本来「大脱走」を入れるべきなのでしょうが、この4本を選んで ”自分らしいチョイスだなー” って満足しております。
オイカワ そうですか。「大脱走」はやっぱり入れるべきかと迷いましたが。割り食った映画かもしれませんね。「暴力脱獄」のポール・ニューマンはカッコ良かったですね。
bellbell はい。この映画はなんと言ってもルークのカリスマ。男が惚れる男、これにつきると思います。
オイカワ 今回、観直しました?
bellbell 観ました観ました。デニス・ホッパーとハリー・ディーン・スタントンが出ているのに初めて気づきました。(笑)
オイカワ デニス・ホッパーも出てたんだ。ハリー・ディーン・スタントンは何となく覚えてるけど。でもこのタイトルあんまり良くないですよね。原題のままの方が良かったんじゃないかなあ。
bellbell そーです。”Cool Hand Luke ”でしたか。ビデオ屋で見つからなくって「暴力脱獄ありますか?」って若い女の子の店員に聞いたら「え?」って顔されました。
オイカワ かなり脱獄に固執してる男なんだけど、ポール・ニューマンだとあまりマッチョな感じがしないんですよね。
bellbell はい、何回も脱獄に失敗するし、卵たくさん食べ過ぎておなかパンパンにしているし、今考えるとあんまりカッコ良くないのですけど、でもニューマン!いいんですねー。
オイカワ 結局、ルークをあそこまで脱獄に駆り立てたモチベーションって、どこにあったんですか?
bellbell はっきり描かれていません。ただ単に閉じ込められているのがイヤだったとしか思えません。
オイカワ そうですよね。そこが不思議な映画でしたね。確か、刑の内容もたいしたこと無かったですよね。
bellbell そうですね。最初に脱獄するきっかけは、母親の死に目に会えなかったってことで・・・。実はマザコンではないのかと。
オイカワ おや、「白熱」のキャグニーと一緒(笑)。
bellbell ですね、そこら辺かもしれません。アメリカ男性のツボというか(笑)
オイカワ そういえば、「アルカトラズからの脱出」のイーストウッドもモチベーションが良くわからなかった印象あります。モチベーションわかんなくても、イーストウッドならそりゃ脱獄するだろうよ、と思いましたが。
bellbell あはは。オイカワさん、イーストウッド、お好きでしょ?
オイカワ 大好きです。ドン・シーゲルも好きです。
bellbell 昔よくテレビで放映されていましたよね、「アルカトラズ・・・」「ダーティ・ハリー」・・・。私、これでイーストウッド、好きになったんです。
オイカワ そうですか。ぼくは完全に「ダーティー・ハリー」ですね。ホントによくテレビで放映してましたよね。「アルカトラズからの脱出」はハードボイルドな映画でしたね。こういうのハードボイルドって言うんだろうなって思いましたよ。
bellbell 「ショーシャンク・・・」や「グリーン・マイル」は「アルカトラズからの脱出」の影響も大きいと思うんですよね。ハード・ボイルドでありながらエンターテインメントである、とってもハラハラドキドキした映画でした。
オイカワ そうか、それは考えたことなかったな。ちゃんと観直そうっと。画面が非常に暗いっていう印象があるんです。映画が暗いんじゃなくて、物理的に暗い、光量が少ないっていう印象。カメラはブルース・サーティーズで、この人、イーストウッドの監督作品もある時期までほとんど撮ってました。「ペイルライダー」っていう傑作があるんですが、それももの凄く光量少ないシーンがあった。映画館で見て、ほとんど何も見えないシーンがありました。ビデオで観ると、よく見えないっていうの頻繁にあるけど、映画館で見て、何も見えないほど暗いシーンっていのは珍しかった。
bellbell あ、そうなんですか。テレビで山田康雄吹き替えでばっかり観ていたのでわかりませんでした。
オイカワ ぼくのベストの隠し球は「大脱獄」です。
bellbell この映画のお話、聞きたいです。
オイカワ ちょっと変った西部劇というのが一番適してるかもしれません。監督がジョセフ・L・マンキーウィッツ。マンキーウィッツが西部劇撮るっていうのも珍しいんですが、脚本がデビッド・ニューマンとロバート・ベントンなんです。「俺たちに明日はない」の次に書いた作品だと思います。
bellbell マンキーウィッツ、職人ですねー。
オイカワ 何でも屋ですよ。プロデューサー、ライターとしてのキャリアなんてもの凄く古い。1930年前後からやってる人ですから。
bellbell 結構晩年に作られた作品ですね。カーク・ダグラス、ヘンリー・フォンダですか。
オイカワ たぶん遺作だと思いますよ。カッコ良さはあんまり無くって、みんな身なりもハートも汚い野郎どもばかり。そいつらのだましあい的要素もある映画です。
bellbell お話は単純でないのですか?
オイカワ 基本的にはそんなに複雑じゃないですよ。刑務所内にいる脇の奴らのキャラとか結構面白いし、小道具の使い方も面白い。キーワードは毒蛇です。って言ってもよくわからないと思いますが(笑)。
bellbell 西部劇なのですか?
オイカワ そうですね。西部劇です。
bellbell 1970年ですよね。西部劇映画が少し下火になってきたころの映画ですね。
オイカワ もう完全に下火です。マカロニウェスタン後ですから。マカロニウェスタンの影響も感じられる映画です。
bellbell あ、ここに映画公開時のコピーがあるのですけど。「生き地獄と呼ばれた アリゾナ監獄に爆発する 男の意地! 血みどろの暴動、必死の脱獄== 凄い殺し合いのあげく 最後に残った二人だが……」
オイカワ でもそこまでおどろおどろしくないですよ。もっと軽いっていうか、ブラックコメディとしても観ることができる映画だと思いますね。
bellbell ですね、このコピーは・・・(笑)。なかなか洒落た映画みたいですね。
オイカワ そうですね。凄い傑作っていうより、ぼくは楽しんで観ました。この時期の西部劇って、もう純粋な西部劇じゃありませんね。「明日に向かって撃て」が青春映画であるように、西部劇の服を着た別ジャンルの映画ばかりです。
bellbell ええ。しかも私はマンキーウィッツ、結構信頼してますから(笑)
オイカワ ビデオ屋にビデオ置いてるかどうか保証できないですが、機会があったらぜひ見てください。
オイカワ 「ダウン・バイ・ロー」は、ぼくは期待しながら封切り初日に映画館に行った記憶があります。
bellbell 私、この映画嫌いな人いるのかなーとか思うのですが・・・。オイカワさんはどうです?
オイカワ 好きですよ。でも・・・
bellbell でも???
オイカワ 期待が大きすぎた。
bellbell あ、そうですか。私この映画を観るたび、トム・ウェイツの CD が欲しくなります。買ってないけど。
オイカワ ゴダールがトム・ウェイツの曲を使ってて衝撃受けたことありますよ。「カルメンという名の女」だったかな。
bellbell え、そうだったんですか?気がつきませんでした。この映画はやっぱりモノクロの画面が美しいです。見直して実感しました。
オイカワ そうですね。カメラはロビー・ミュラーですよね。ヴェンダースとのコンビで有名です。ぼくね、「ストレンジャー・ザン・パラダイス」を観たとき、こりゃすっげえと思ったんです。それを引きずりながら観てしまったのかもしれない。
bellbell インパクトからいうと「ストレンジャー・・・」かもしれないです。でも「ダウン・バイ・ロー」の寓話のような世界、捨てがたいので入れました。「オー・ブラザー!」よりよっぽどシンプルでキュートな映画だと思います。
オイカワ そりゃそうですよ。“キュート”“寓話”って、ホント鋭いですね。まさにそうなんですよ。で、ぼくはそこにちょっと抵抗を感じたのかもしれません。今から思うと、「ストレンジャー〜」もキュートで寓話的要素あるんですけどね。
bellbell 「ダウン・・・」のほうが映画としての方向性がはっきり出ていますよね。ベニーニを出演させたあたりなどにそういう印象を持ちます。
オイカワ ロベルト・ベニーニは良かったですね。ジョン・ルーリーやトム・ウェイツはジャームッシュの世界に溶け込み過ぎてるんですけど、ベニーニはちょっと違和感を振りまいてる感じがありました。
bellbell 彼が入ってから、3人の間に独特な間が生まれるんですよね。一時も目が話せない状態になる・・・。ブレッソンみたいです(笑)
オイカワ そうなんですよ。だから、このベニーニの起用はすごく良かったと思います。
bellbell ええ、私ベニーニの映画はベタであまり好きでないのですけど、この映画のベニーニは好きです。あとはこの映画全体のお気楽なムードですね。
オイカワ なるほど。ジャームッシュの作品の中で一番好きですか?
bellbell そうかもしれませんね。これ以降の映画も好きですけど、一番といったらこれかも。
オイカワ ぼくは「デッドマン」です。
bellbell ・・・・・・おっと・・・・・・です(笑)
オイカワ 今いちですか?
bellbell うーん・・・正直よくわかんなかったです。
オイカワ そうですか。確かに後半、どんどんわかんなくなりますよね。どこが良かったかと聞かれると困るんですけど、何かそれまでのジャームッシュには無かったまがまがしいものを感じまして(笑)。
bellbell なるほどねー。なんとなく浮世離れした映画が多いですよね、ジャームッシュ。
オイカワ でも「デッドマン」に感じたまがまがしさっていうのは、もしかして見当違いかなとも思う部分もあります。つまり、ぼくが求めてるものは、本当はジャームッシュに求めるべきことではないのかもしれない。やはり、ジャームッシュの本当の美点は、bellさんが言っていたように、寓話性なのかもしれないです。
bellbell 「ダウン・バイ・ロー」の楽観的でおとぎ話のような世界、コーエン兄弟も「オー・ブラザー!」で表現したかったのでしょう。でも「ダウン・・・」の汚い沼を流れていく船に感じた、切なげな放浪感(・・・といっていいのか)は特別でした。
オイカワ ジャームッシュとコーエン兄弟では役者が違います。なんて言ったら、コーエン兄弟好きなbellさんに怒られるかな。bellさんが今、言ったように“おとぎ話の世界”こそが実はジャームッシュの本領なのかもしれないと思います。そう考えると、「ダウン・バイ・ロー」は傑作なわけですよ。
bellbell ”放浪”というより”彷徨”かな。「デッドマン」もある意味そうかもしれませんね。脱走モノでこんな雰囲気を出せるのはジャームッシュだけかもしれませんね。
オイカワ 「デッドマン」の方がより青くさい感じしますけどね。そこが好きだったんだけど。「ダウン・バイ・ロー」の方が完成度高いと思いますね。
bellbell このジャンルで是非挙げておきたかった映画です。
bellbell 「暗黒街の弾痕」についてお聞きしても良いでしょうか?ラングはやはりお好きですか?
オイカワ 好きと言うより、むしろ凄いと言った方が合ってるのかな。そんなにたくさん観てるわけじゃないんですけど、観たものはどれも凄かった。圧倒されました。そんな中で「暗黒街の弾痕」は非常に好きな作品です。
bellbell 私も思い出しきれないでいた映画です。ラングの映画でなんかあったような・・・とか、ヘンリー・フォンダって「間違われた男」だけだっけー?・・・って感じで。観たのはだいぶ前なので忘れていましたが、なんかひっかかっていました。
オイカワ ああ、「間違われた男」。ヒッチコックですね。ヘンリー・フォンダはこういう役が合うのかな。「暗黒街の弾痕」は最初に見たとき、見終わったあと、しばらく席を立てませんでした。ほかの作品もそうですが、主人公の追い詰め方が本当に容赦ないんですね。悲劇への追い詰め方がね。
bellbell 観ていて怖くなりますよね。この作品はアメリカへ渡った後の映画ですね。
オイカワ そうですね。3作目くらいだと思います。このジャンルに入れるのが適してるのかはあまり自信ないんですが、途中に出てくる刑務所のシーンがあまりにも強烈で・・・。
bellbell 細かい演出が効いているって印象があるのですけど・・・。
オイカワ 刑務所でヘンリー・フォンダが妻のシルヴィア・シドニーと面会するシーンで、気付かれないように、「ピストルを用意して」というようなことを言うんですが、その時のヘンリー・フォンダの目が怖いんですよ。あと、刑務所内でけっこう表現主義の名残っていうんですかね、思い切った影の使い方をしてるところも、わざとらしさを超えた凄みを感じたました。脱走するとき、霧の中からピストルを持ったヘンリー・フォンダの影が現れるところも忘れられません。
bellbell フォンダの顔が目に浮かびますねー (笑)。ラングの映画について、一つ一つのシーンを語り始めたらキリがないように思えますよね。私の大好きなヒッチコックも相当の影響を受けていますし、サスペンスといえば、”初めにラングありき” ってところでしょうか。
オイカワ ええ、そうかもしれません。この「暗黒街の弾痕」はかなりタイトに作られている上に、メロドラマ的要素も強いので観やすいんですよ。ラング入門編としては最適なんで、ぜひたくさんの人に見てもらいたいです。
bellbell ドイツ時代はもっとクールな映画でしたよね。
オイカワ そうですね。ドイツ時代のファンも多いですよね。
bellbell 単純なストーリーながらも強烈な表現してましたよね。
オイカワ ぼくはアメリカに渡ってからの方が好きなんですよ。
bellbell 「死刑執行人もまた死す」とかですね。
オイカワ あれは凄い。あれには参った。
bellbell もうあれは他に比べようがないです。
オイカワ ですね。あれも主人公の追い詰め方のただことじゃなさは共通してると思うんですが、「暗黒街の弾痕」より甘さを廃した分、より強烈でした。
bellbell ロッセリーニの「ロベレ将軍」、私観ていないんですが、どんな映画でしょう?
オイカワ これはですね、一言でいえば、マッチョでもクールでもない刑務所映画の傑作です。
bellbell やっぱりイタリア・ネオリアリズムですか?
オイカワ うーん、ネオリアリズムとか全く考えませんでした、見てる間は。
bellbell でもロッセリーニらしい映画なのでしょうか?
オイカワ そうですね、やっぱりロッセリーニですね。主演がヴィットリオ・デ・シーカなんですよ。
bellbell ほー、デ・シーカ、役者としても有名ですよね。
オイカワ ええ。これは59年の作品だから、かなりオジサンになってからの出演作ですが、素晴らしい役者だということが、よーくわかりました。
bellbell ロッセリーニは「無防備都市」や「戦火のかなた」が有名ですが、これらの作品とは違うのでしょうか。
オイカワ えーと、この映画は、第二次世界大戦中の話で、ちんけな詐欺師がいるんですね。いい歳して、まあ女に金をせびって生きてるような。彼は、イタリア人なんですけど、駐留してるナチスの下士官と結託して、詐欺行為をしてるんです。反政府組織とか、戦争に反対してナチスに捕まった人たちの行方を捜してる家族に、「捜してあげるから」とか言って、代償に金品を巻き上げるんですね。捕まった人たちはもうすでに虐殺されたりしてるんですよ。ナチスの下士官に巻き上げた金の半分を流して、家族には「今、抑留されていて元気だ」とか言ってもらってね。
bellbell その詐欺師がデ・シーカで?
オイカワ うん、そう。それで、ナチスの上層部がイタリアの反ナチ組織を壊滅させようとしてるんです。反ナチ組織のリーダーがロベレ将軍っていうんですよ。ナチスの作戦としては、まず、ロベレ将軍を捕まえて捕虜にする、で、その情報を流せば、反ナチ組織のメンバーたちがロベレ将軍の救出作戦をするだろう、そこを一網打尽にして処刑する。だけど、間違えてロベレ将軍を殺しちゃうんです。それで、困って、ニセのロベレ将軍をでっちあげようとする。ちょうど、そんな時、デ・シーカ扮する詐欺師が、ついにヤキが回って捕まっちゃうんです。詐欺師にしては見た目も立派だし、元役者か何かなんで演技もできるだろうと、ナチスの上層部は彼をニセのロベレ将軍に仕立て上げる。
bellbell へー、数奇な運命ですね。
オイカワ そうなんです。政治犯ばかりが収容されている刑務所にニセのロベレは送り込まれる。その中に、反ナチ組織の重要人物がいるはずなんだけど、偽名とか使ってるからナチスはわからない。それで、ニセロベレに探れって命令するんですね。そうしたら、スイスに逃がしてやるって言ってね。ニセのロベレは最初命令に従うつもりなんだけど、政治犯たちの純粋さとか、心意気とかね、そういったものにだんだん感化されていくんです。周りは彼を本当のロベレ将軍と見てるわけで、本当に尊敬の念をもって接する。そのうち、ちんけな詐欺師は、ナチスのやり方に疑問を感じるようになる。ほとんど政治的な意識なんて無くて、自分が生き伸びることしか考えてなかった男が、獄中で変っていくんです。
bellbell なるほどー、人間性を取り戻すのですね。
オイカワ そうなんです。獄中で何か、高貴なものに触れるわけです。最後に彼は、ナチスが欲しがってる情報をつかむんです。それは、政治犯たちが処刑を待ってる部屋でつかむんです。で、処刑される人の名前が呼ばれ、ひとりひとり部屋を出て行く。最後にロベレの名前も呼ばれる。でも、これは本当に処刑するために呼ばれるんじゃなくて、ナチスの幹部が途中でロベレを引っ張って、情報を聞くために呼ばれてる。だけどニセのロベレは言わないんです、情報を。そのかわり、メモに何か走り書きをしてその紙を幹部に渡す。そのメモはロベレ将軍の本当の奥さんにあてたメッセージなんですけど、そこには「イタリア万歳と言って私は死ぬ」って書いてあるんです。そして自ら刑場に向かう。ナチの幹部はあわてて追いかけるんだけど、もう彼は杭に縛られたほかの政治犯たちの横に並んでる。そこで一斉に射殺される。詐欺師が黄金の心を手に入れて死ぬんです。もう、ほとんどネタばらしちゃいました(笑)。
bellbell いえ、筋がわかっていても、観たら面白い映画だと思います。シビアな内容ですね。
オイカワ ええ、シビアです。ロッセリーニの即物的と言いたくなるような演出が、また素晴らしい。最後の処刑シーンのあっけなさとかね。人が石ころのように死ぬ感じっていうのかなあ。
bellbell いいですよね、ロッセリーニ。大好きです。観なくちゃいけませんね。
オイカワ 観てください。なんかね、こう非常にお金が無い状況で撮ったのがバレバレなんですよ。セットとかもね、ほかの戦争映画の町のセットをそのまま使い回ししてる感じだし。ニュースフィルムを平気でパクってくるし。でも、ロッセリーニにはそんなこと全く関係ないなって。たぶん、ロッセリーニには、人間がいさえすれば、もう映画はできるっていう確信があるんだと思いますよ。
bellbell そういやロッセリーニの映画は貧乏くさいですね・・・。「神の道化師フランチェスコ」など特に。当たり前ですが(笑)
オイカワ でも、あれは傑作でしょう。
オイカワ 話はちょっとかわるけど、bellさんは映画に感動を求めてます?
bellbell いえ、感動は結果的にあとからついてくるものって考えております。
オイカワ そうだよね。ああ、よかった。
bellbell 感動を売りにした映画には身構えてしまいます。
オイカワ ぼくはね、積極的に嫌いなんです。感動を売りにするのも求めるのも。感動って平気で言うどこかの首相とか、もうそれだけで絶対信用できないな(笑)。「ミッドナイト・エクスプレス」はずいぶん、昔に見たっきりなんだけど。この映画には感動しました?
bellbell これ?これって感動モノなんですかー?私ホラーとしてチョイスしました(笑)
オイカワ いや、感動モノとは思わないけど、ホラーってのも凄いな。友だちで、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」をホラーだって言ってた奴がいるけど(笑)。
bellbell 同じ感覚かもしれません。私アラン・パーカー、大好きなんです。世間では評判の悪い映画でも、全部面白く観られる。
オイカワ そうっすか。アラン・パーカーってほかにどんなの撮ってたっけ。
bellbell 特にすきなのは「バーディ」です。マシュー・モディンとニコラス・ケイジの。あと「エンゼル・ハート」や「アンジェラの灰」も暗ーい映画でした。「ザ・コミットメンツ」や「エビータ」など、音楽の使い方がすごく好きです。あと「ミシシッピー・バーニング」ですね。
オイカワ 「バーディ」は観たな。あれは精神病院だっけ。変なオチだったよね。ラストに笑った記憶がある。「ミッドナイト〜」の脚本は確かオリバー・ストーンだよね。
bellbell そう、オリバー・ストーンの色が強いように思えるのですが。オイカワさん、ストーンはよく観ていらっしゃるようですね?
オイカワ そうですね、わりと見てるかな・・・。今、アラン・パーカーのフィルモグラフィを見てるんだけど、見事に一貫性無いですなあ。ああ、確かに音楽には凝ってる気がする。そういえば、「ダウンダウン物語」って、ぼく封切初日に見に行ったよ、中学1年の時、2年かもしれないけど。これサントラも買ったな。
bellbell これも変わった作品ですよね。まー、大人社会に対する皮肉なのでしょうけど。新作はケビンスペーシー主演で死刑制度を扱ったみたいですね。
オイカワ bellさんはオリバー・ストーンはダメ?
bellbell えーっとですね。すごく対象から離れて映画を撮っているって印象なんですね。冷めている・・・というより客観的すぎる気がするんです。この「ミッドナイト・・・」も観直したのですが、ストーンの映画のようでした。
オイカワ うん、確かにあんまり愛は感じないですね。ぼくは、まあ観てるほうだと思うけど、そんなに好きってわけじゃないです。80年代はかなりもてはやされたけど、どこがいいかよくわかんなかった。ぼくが面白いなと思ったのは2本だけ。「ナチュラル・ボーン・キラーズ」と「Uターン」。「エニイ・ギブン・サンデー」は見てないからわからない。基本的に品が無いですよね、ストーンって。品が無くてもいいんだけど、品の無さを何か社会性みたいなもんで隠してる印象が強かったけど、ぼくの好きな2本は開き直って品の無さを全開にしてるんで愛してしましました(笑)。
bellbell そうですよねー、下品。この人もともとジャーナリストですよね?
オイカワ あ、そうなんだ。そう言われれば、そんな感じもするな。「ミッドナイト〜」は、ぼくの同級生とか同じ歳くらいの奴らで、当時すごいファンが多かったですよ。bellさんがこの映画を選んだ理由をもうちょっと具体的に聞かせてください。
bellbell ここまで徹底的になんの感情も入れずに刑務所・・・トルコのですが、の悪夢のような状況を延々と見せられて、観ているほうも多分感覚が麻痺してくると思うんですよね。主人公の人権は全く無視。精神棟に入ったあたりでは、この映画になんの意味があるんだろう・・・って疑問がピークに達して、で、偶然が重なって開放されるラスト。頭で考えるより、最後の開放感を体感した感覚が面白かったんです。悪夢から開放された・・・。ホラーですね(笑)
オイカワ そういうことか(笑)。よくわかりました。ぼく、昔1度見たっきり、見直してないんですよ。っていうことは、ぼくにとってはポイント高くない映画だなって思ってた。もう1度見直してみよう。今の話聞いてちょっと思い出したのが、ジェシカ・ラングの「女優フランシス」。あれもほとんどホラーだったな。出来の悪いホラーだけど。ラズロ・コバックスのカメラ見たさに耐えましたが(笑)。
bellbell ずいぶん前に観ましたが、全然覚えてません(笑)
オイカワ 覚えてなくても何の問題もないっす。
bellbell 「ロンゲスト・ヤード」。私これ入れようかと思ってたんですが、オイカワさん選ぶかなーって思っていれませんでした。アルドリッチ、いいですねー。
オイカワ やっぱりそうですか。ぼくもbellさん選ぶかなと思ってはずそうとも思ったけど、これだったらダブってもいいやと思い入れました。これはもう何にも言わなくてもいいでしょ(笑)。問答無用で面白い映画ですよ。
bellbell やっぱりバート・レイノルズですよねー。
オイカワ バート・レイノルズの中で一番いいんじゃないかな。まあ、男の世界ですよ。でも、アルドリッチは女を撮っても素晴らしいんですよ。カッコ付きの女じゃないけど。「カリフォルニア・ドールス」も、この「ロンゲスト・ヤード」と併せてぜひ見てもらいたいです。
bellbell 私このタイプの映画で 「勝利への脱出」も思い出したんです。スタローン主演でジョン・ヒューストン。これはえらく娯楽作品に仕上がってました。
オイカワ 話はほとんど同じですね。あっちはサッカーか。
bellbell ええ、配役が豪華で。マイケル・ケインにマックス・フォン・シドー、神様ペレまで出ちゃってます。
オイカワ 当時、ペレ出演は話題になってましたよ。でも「ロンゲスト・ヤード」の方が断然好きだな。やっぱり試合の時の興奮度がより高いじゃないですか、アルドリッチの方が。ヒューストンはああいう話より、むしろ「ザ・デッド」みたいな映画の方が合ってる気がしましたね。
bellbell 晩年はヒューストン、娯楽志向でしたから「ザ・デッド」は感動的でしたね。アルドリッチは最後までクールな男の世界でしたよね。
オイカワ 「ザ・デッド」はジーンとしましたね。この映画のことはまた今度話すとして、アルドリッチの遺作は「カリフォルニア・ドールス」なんですけど、この映画のクライマックスの興奮度も「ロンゲスト〜」に負けないです。ぼくが観た映画館で「ウィ・ウォント・ドールス!」のコールに合わせて手拍子起きてましたから。ぼくも思わず手拍子しちゃいました(笑)。
bellbell 女子プロレスでしたっけ?
オイカワ です。マネージャーがピーター・フォークでね。ずーっとドサ回りやって、泥んこプロレスまでやらされてね。スポ根っぽい話だけど、どこか醒めたところがあるんです。でも、最後の試合は思いっきり盛り上がる。
bellbell 「ロンゲスト・・・」も盛り上がってましたね。画面分割など使って、臨場感がある撮り方してました。
オイカワ 最後のスローモーション、よくある手法なんだけど、あの映画のスローモーションは凄く魅力的でした。ラストの泣かせ方もさりげなくていいです。
bellbell レイノルズがゆっくりスタンドに向かって歩いていくと・・・、ってシーン、いいですよねー。
オイカワ うんうん、いい。もういっぺん見たくなった。
bellbell まさに同じゲームを戦った男同士の・・・って感じなのですが、未見の方のためには言えません(笑)
オイカワ そうです。言えません。見てください。
オイカワ bellさんが選んだ「終身犯」。
bellbell バート・ランカスターの演じた主人公の生き方が最高に好きです。
オイカワ 小鳥の研究か何かするんですよね、確か。そういえばこれも母親が絡んでなかったですか?ちょっと記憶があいまいだけど。
bellbell そうです。確かお母さんが収監されているランカスターに会いにくるんじゃなかったかな。で、なんか会わせてもらえない。逆上して、終身刑を言い渡される。最初はキレやすい性格なんです。で、たまたま拾った小鳥の世話を続けるうちに、小鳥の病気の大家になるって話ですね。
オイカワ ああ、そうだったかもしれない。監督はジョン・フランケンハイマーです。最近亡くなりましたね。
bellbell そうです。彼も男の映画を撮る監督でしたね。この「終身犯」、無学の徒が、小さく弱いものの魂に触れて、自分の生き方を変えていく・・・、「レ・ミゼラブル」のようだと思いました。
オイカワ ああ、なるほどね。男にとって、監獄は成長の場なのかな。「ロベレ将軍」もそうだしね。
bellbell そういう見方もできるでしょうね。極限状態ですから・・・。あと監獄モノで共通するのは、主人公が男でも女でも、ホルモンのいっぱい出ている映画ができるって感じます(笑)
オイカワ そりゃそうでしょうね、極限状態だから(笑)
bellbell ですよね、「女囚701号 さそり」もフェロモンたっぷりじゃないですか?
オイカワ うーん、フェロモンなのかどうかわかんないけど。まあ、この映画はケバイことは間違いないですよ。原色使いまくりで、ハッタリやコケオドシもたんまりあるしね。70年代日本映画研究会の会長として(笑)、この時期の日本映画にはわんさか刑務所シーンが出てくるんで、何か1本ぜひと考えてですね、このさそりシリーズの第1作目を入れました。でも一番のポイントは何と言っても梶芽衣子です。この時期の梶芽衣子を見ると、梶芽衣子以外は女優じゃないって気がしてくるほど強烈です。あの“目”ですね。
bellbell 私もこの映画はだいぶ昔にテレビで観たきりなんですが、梶芽衣子のカッコよさだけ覚えています。他の囚人にいじめられるんでしたっけ?
オイカワ いじめられるなんてもんじゃないですよ。他の囚人とも対立するけど、刑務所の人間ともバトル三昧。刑務所は明らかに国家権力の象徴という描き方をしてますよ。反国家権力映画です(笑)。時代ですねえ。
bellbell しかも女囚ですからね。女囚モノってだいたいそんな展開のような・・・。
オイカワ そうです。エロを盛り込みつつね。
bellbell 女囚ナントカ・・・。ありましたよね、よく(笑)。
オイカワ 基本的には好きなんですけど、みんな同じだからあんまり見ると飽きます。マニアいるけどね。ぼくはマニアじゃありませんよ(笑)。
オイカワ さっき、言い忘れたけど、「終身犯」をリメークすればいいんじゃないのかな、ハリウッドは。最近企画不足みたいで、リメーク多いでしょ。今後、刑務所ものの需要が増えるって話をしましたよね、戦争後ってことで。その絡みで言うと、「終身犯」のリメークをオススメしますね。「ロベレ将軍」だってシチュエーション変えれば、アメリカの話にできるしね。リメークすればいいんですよ。ハリウッドもアジア圏の映画に注目するのもいいけど、まず自国の映画や過去の名作をマジメに見れば、まだ宝の山がいっぱいあると思いますけどね。どう思います?
bellbell 基本的にリメイクは観ません。自分が好きな映画だったら特にそうですけど、「終身犯」のようないい映画を知らない人たちには、リメイクででも観る機会があったほうが良いのでしょうか・・・。
オイカワ リメークなんてマジメにやられたら見る気起きませんよ。だから、かっぱらってこりゃいいんです。金を発生させずに。骨格だけ生かしてうまーくパクればいいのに。そしたら面白いネタはいくらだってあるのにって思うんです。リメークしましたって、マジメな顔して言われちゃ見る気なんて起きませんよ。
bellbell そうですよね、どうしたって比べられちゃうわけですから。しかし最近のハリウッド、ほんとネタ不足状態を露呈しています。
オイカワ 単に勉強不足でしょ。生意気なようだけど。
bellbell アイデア不足だからって、たくさんの脚本家のアイデアをつぎはぎしてもいい作品ができるわけないんですよね。
オイカワ そうなんですよ。エッセンスをつかめてないんですよ。面白さのツボってあるじゃないですか。言葉じゃうまく言えないけど。ツボをつかむ力が落ちてる感じはしますよね、一部を除いて。
bellbell また面白くみせる力量を持った監督ってのも見当たりません。映像技術の発達ばかり取り上げられている感じです。・・・ってところで、ベストセラーを映画化したジョナサン・デミなんですが・・・。
オイカワ はいはい「羊たちの沈黙」。これは精神病院なんですけど、まあ、牢獄に入ってるようなものなので。まず、90年代から1本選びたいという意識がありました。でも、感動ものを敬遠すると、これしか残らない(笑)。
bellbell 私もこれは大好きな映画です。凶悪犯を収監している精神病院ですよね。監房の中にいるレクター博士、とてもいい絵です。牢獄にこれだけ特殊な存在感を持たせた映画ってあまり思いつきません。
オイカワ 役者2人も良かったです。
bellbell ええ、二人の禅問答のような対話シーン。えらくストイックでした。
オイカワ 90年前後のジョディ・フォスターはおそらく一番脂の乗ってる時期だったと思います。映画俳優としてのアンソニー・ホプキンスって、実はこの映画までそれほど印象に残ってなかったんです。だから、これには驚きました。
bellbell 知的な女性 FBI捜査官、フォスターはぴったりですよね。逆にキワモノ的なホプキンス・・・。思い出すのは「エレファントマン」くらいかな (笑)。
オイカワ そうですね。「エレファントマン」とぼくは個人的には「オードリー・ローズ」って忘れられないんですけど。ジョディ・フォスターはこれの2〜3年前の「君がいた夏」が素晴らしかった。
bellbell その二つは観てません。レクター博士は牢獄に閉じ込められていて、目の前にいるクラリスに手は出せない。それなのに言葉のやり取りを続けるうちに、どんどん彼はクラリスの心の中に入っていく。その様子が緊張感があって怖いんですね。
オイカワ 怖いし、セクシーでしたね、その関係性が。それはそうと今ひとつわかんなかったのは、クラリスとスコット・グレン演じる上司の関係なんですけど。あの2人の間には恋愛関係めいたものはあったんですか?
bellbell 小説ではクラリスはクロフォードに惚れているんです。クロフォードには病気の奥さんがいて、途中で死んじゃうんですけどね。そこら辺のせつないエピソードはすべて省略されています (笑)。あと、原作ではクラリス、科学博物館員とデキちゃうってラストでした(笑)。
オイカワ そうなんですか。原作読んでないもんで。でも、クラリスと上司の間に何らかの感情的な絡みがあるのは、映画でも雰囲気出てたような気がしますけどね。
bellbell そうですね、ジョディ・フォスター、そこいらはちゃんと原作読んで役作りをしているでしょうから。
オイカワ でも、やっぱり一番おもしろいのはレクターとクラリスの恐ろしくもセクシーな会話、そしてそれを見事に演じた2人の役者ですね、この映画は。そういえばジョナサン・デミってこのあと「フィラデルフィア」を撮ったと思うけど、その後って何か撮ってますか?
bellbell 「愛されし者」。監督としてはこれだけみたいですね。1998年以降は撮っていないようです。
オイカワ そうか。病気でもしてるのかな。「サムシング・ワイルド」とか好きだったんだけどね。(ジョナンサン・デミは「愛されし者」の後にも監督作品が2本あり、来年公開予定の作品も撮影中。また、スパイク・ジョーンズ監督の話題作「アダプテーション」のプロデュースもしています。全然健在でした。スミマセン)
オイカワ ええと、これで互いにベストにあげた作品はひととおり話したことになりますかね。
bellbell そうですね。全部一応言及しましたねー。
オイカワ 心残りは「大脱走」ですかね。
bellbell そうですね、これは観て当たり前な映画です。
オイカワ 刑務所映画って言ったらまずこれのはずなんだけど、2人ともあげてないのが、ちょっと笑ったな。
bellbell お互いひねくれ者ってことで(笑)
オイカワ ははは。けん制し合いすぎたかもね。
bellbell まー、普通ならば必ず入ってくる映画ですから。わざわざ薦めなくてもみなさんも観る機会があるでしょう、きっと。
オイカワ そうだね。ぼくは迷った映画で「ニューヨーク1997」があるんですよね。
bellbell あー・・・、それ私観なおしたんです (笑)。迷いました。
オイカワ 好きなんですよ、ぼく、カーペンター。最近のは見てないからビデオで見ようかなと思ってます。それと「第十七捕虜収容所」と「大いなる幻影」かな、迷ったのは。
bellbell ビリー・ワイルダー、今見るとこの作品はちょっとハナにつきます。あと私は「蜘蛛女のキス」かな。
オイカワ 「蜘蛛女のキス」は今回見直しました。入れませんでしたけど。
bellbell ラウル・ジュリアいいんですけどね。
オイカワ ストーリーもいいですよ。
bellbell そうですよね、いい映画なんでもったいないです。
オイカワ ぼくはbellさんが最後の1本で入れるかな、と・・・(笑)
bellbell あんまり人を当てにしちゃいけませんね(笑)
オイカワ すいません。じゃあ、今回チョイスしてないものの中でオススメは「大脱走」と「ニューヨーク1997」と「蜘蛛女のキス」ということで。
bellbell そうですね。あとは「戦場にかける橋」や「戦場のメリークリスマス」、「手錠のままの脱獄」なんか思い浮かびました。
オイカワ ぼくは、古典、名作と呼ぶにはあまりにも最近の映画なので最初にはずしたんだけど、スティーヴ・ブシェミ監督作品「アニマル・ファクトリー」をぜひオススメしときます。全編刑務所内の映画で、クライマックスに脱獄があるにもかかわらず、孤独感や閉塞感とも無縁の映画です。人によっては退屈と思うかもしれないけど、ぼくは感動しました。小泉首相は絶対感動しない自信があります(笑)。劇場未公開ですがビデオは出てます。
bellbell ブシェミ、映画撮っているんですか・・・。楽しみ。んじゃ、私も最近の映画を挙げておきます。「コーカサスの虜」。チェチェン紛争が背景です。こんな重いのイヤって人には、とりあえず「グリーン・フィンガーズ」でも挙げておきます(笑)
オイカワ どっちも見てないんで、ぜひ見ますね。bellさんと話してもういっぺん色々見直したい映画が出てきました。
bellbell 私もオイカワさんおすすめの観てない映画、観ます観ます。(ビデオ屋にあるかなー・・・)
オイカワ どうかな、ビデオ自体はみんなあると思うんで、在庫が多い店に行けば大丈夫だとは思うけど。
bellbell そこらへんがね・・・。すすめておいて、”ビデオ屋になかった” って言われると辛いですよね(笑)