面白い映画教えます

70年代と80年代の断層

  

断層に位置するのはズバリ『翔んだカップル』

「日本映画の70年代と80年代の断層」について考えました。そして一応の考えをまとめました。

70年代にわかれを告げ、80年代に突入する契機となった作品は、わたくし的には1980年制作の『翔んだカップル』では? と思います。80年代は

   70年代の「気合!・汗!・激情!・堕落!・純潔!」

などといった、真剣さが吹き飛んで、軽い調子(60年代の「無責任モノ」とは違う)「なんとなく」という低血圧な気分に占領され、オシャレな気分や、さりげなさ や 外見上のカッコよさ、スマートさを良しとした時代だと思います。汗まみれの一生懸命さを恥ずかしいと言い切れる時代でしたね。ニューミュージックの台頭に見る、生活観の無さもその特長です。

この『翔んだカップル』は高校生の男女が手違いで一つ屋根の下、生活をするお話ですが、全く生活感なし、真剣に悩むこと無しに小ギレイな場所で、ちょっと距離を置いたカメラ位置で、役者は下手なダンスを踊るがごとく、悩んだ真似をし、喜んでみせる映画でした。この映画を初めて観たのは高校2年、文芸地下ででした。何だか興奮してしまって、友人の阿部辰次くんの家に押しかけ一晩中、一人で話しまくっていたことを思い出します。

相米監督の意固地な長回しにあてられたこともありますが、役者とカメラのちょっとした距離感が自分の感性にストライクであったし、今までの血管が浮き出る日本映画、安易にズームインしてくる日本映画に違和感を感じていた自分には新しい映画と感じ、興奮したのでした。

この同じ感情は数年後、ダブル浅野によるCXの「抱きしめたい」を観た時に感じました。いわゆるトレンディドラマのはしりだったわけですが、やはり生活観の無さ、小ギレイさ第一主義のドラマでしたね。

話が余談になりましたが、70年代にお話を戻しますと、広告史で有名なコピー「モーレツからビューティフルへ」、これは70年代初頭に出された「時代の予感」だったのでしょうが、私が知る限り、70年代の日本映画は決してビューティフルになったわけではなく、60年代の「モーレツ」を猥雑に進化させていったのではないかと思っています。

80年代にきて、やっと「モーレツ」の呪縛から解き放たれて一挙に「なんとなく」という無気力のベクトルを提示したのが『翔んだカップル』だったのではと思っております。

(2003・11・19マーク・レスター)

80年代を舞台した作品がオモロくなさそうな理由

そーいえば、60年代、70年代を舞台に(回顧?)した映画って良くあると思います。例えば、涙でくもってスクリーンが見えなくなってしまっ三池崇史の世紀の傑作『岸和田少年愚連隊 望郷』とか。

でも、なんで80年代を舞台にした作品ってオモロそうに思えないんだろうか? まだ、時代が近いせいか? そうじゃないと思う。60年代、70年代は、風俗・ファッションもイケてたが、80年代ってゼンゼンダメダメだったんでは……? 偏見か?

(2003・11・26つジ)

ロマンポルノ、ピンクに見る“80年代的なもの”

80年代映画ということで言うなら、最も80年代的なものを描き出していたのは、80年代のにっかつロマンポルノ、ピンク映画の諸作品であるだろう。

というのは、他の大手の一般映画80年代に入り、いよいよもって撮影所システムのプログラムピクチュアの体制が崩壊していく中でかろうじてプログラムピクチュアを量産し続けることが出来たからである。(そのロマンポルノも80年代後半に崩壊するに至るが。)かろうじて、ロマンポルノ、ピンク映画、そして角川アイドル映画があったことがプログラムピクチュアを生き延びさせることになったのだと断言してしまうことは暴言だろうか?

しかし、にっかつロマンポルノやピンク映画の流れを見ても、70年代と80年代でははっきり断層があることはたしかなのだ。神代辰己、曾根中生、小沼勝らの70年代ロマンポルノの作り手のイメージがいまだに鮮烈なので、ロマンポルノというと真っ先にそれをつい思い浮かべたりしてしまうのだけど、実は80年代の金子修介、中原俊、斉藤信幸らのロマンポルノもどこか頼りなげなふるまいながら極めて個性的な作品群を生み出し得ていたわけだし、ピンク映画なら70年代的な若松孝二、高橋伴明(高橋伴明は80年代にもかなり活躍してるが関根恵子と結婚したことからも分かるように本質的に70年代的な人)よりも滝田洋二郎、広木隆一らの作品群に確実に80年代的なものが刻印されていることは見逃すわけにはいかない。

さらには、黒沢清、水谷俊之、周防正行、磯村一路、鎮西尚一、後藤大輔らまで登場させていて来るべき90年代を用意していた80年代ロマンポルノ、ピンク映画の裾野の広さは尋常ではないけれども、それはたとえば斉藤博という脚本家に80年代映画の痕跡を認めることが出来るのかもしれない。

相米慎二とともに70年代には、にっかつロマンポルノの助監督をつとめていた斉藤博は(なお、念のためにいうと、「斉藤ひろし」という現在も活躍している脚本家とは別人)70年代の影を引きつつも、確実にそれとは異なる80年代的な3角関係のドラマを描き出していた人である。『美加マドカ 指を濡らす女』『不純な関係』『高校教師/成熟』『女子大寮VS看護学園寮』などの諸作品であるが、この脚本家が80年代の徒花のように亡くなってしまったことは惜しいことであった。

ここで思い付きであるが、思い付くままに80年代ロマンポルノ&ピンク映画のベストテンをあげてみる。(全くリストなど見ずにあげるので多分、落としているものなど多数、出て来るはず。)

『おんなの細道・濡れた海峡』(武田一成)
『箱の中の女・処女いけにえ』(小沼勝)
『女子大寮VS看護学園寮』(斉藤信幸)
『初夜の海』(中原俊)
『イヴちゃんの姫』(金子修介)
『団地妻・ニュータウン暴行魔』(磯村一路)
『セックス乙女隊・獣たちの宴』(佐藤寿保)
『白衣調教』(広木隆一)
『ベッドパートナー』(後藤大輔)
『欲情させられた女』(高原秀和)

(2003・11・26かねこ)