原作チャールズ・ブコウスキー。舞台はロサンゼルス。マルコ・フェレーリ監督の「町でいちばんの美女 ありきたりな狂気の物語」は、ブコウスキー自身をモデルにしてるアル中詩人が主人公である。
汚れた街の片隅を舞台にした、アル中詩人と自傷癖のある娼婦との哀しいラブ・ストーリー。
2人の出会いや、その後の関係は、決してノーマルなものではないが、ベースになっているのは、堕ちるところまで堕ちた男女のさびしくやるせない交流、すれ違い、そして突然の別れ、とオーソドックスな構造を持つ。
アル中詩人は、破天荒な行動を繰り返すが、本当は傷つくのを怖れて酒に溺れて現実を見ないようにしているデリケートな男である。内面を変えるのを怖れる男。女の自傷癖を受け止められなくて、逃げるように離れる。で、結果的には、その行動が彼女との別れにつながる。女は、彼に対して、客以上のものを求めていたかもしれないのに。
男は失ったものの大きさに初めて気付いてボロボロになる。そして行き倒れになるまで飲む。
フェデリコ・フェリーニ「道」のザンパノの慟哭や、成瀬巳喜男「浮雲」のラスト、高峰秀子の亡骸を前にして、冷酷だった森雅之がもらす嗚咽と一緒だ。
やはり恋愛映画にすれ違いは不可欠だ。
娼婦役のオルネラ・ムーティの顔のアップの美しさ。
主人公やヒロインをどれだけ美しく撮るかというのが恋愛映画には必須だと思う。
この映画、エグいシーンやセックスシーンも出てくるし、背景になってるのは絵にならないロスの裏町ではあるけれど、オルネラ・ムーティのアップだけは、まるで30〜40年代のハリウッド製メロドラマを見ている気になるような画面だ。
時代を超越しているような、と言うより、ほとんど時代錯誤的なアップの美しさに胸を打たれた。
そして、彼女の尻。
陽が明けてゆく窓辺で尻丸出しでたたずむ彼女の後ろ姿を捉えた画面は、映画史上最も美しい尻シーンだ、と思わず断言したくなるほど素晴らしい。オルネラ・ムーティのアップともども胸を打たれた。