面白い映画教えます

「ダンサー・イン・ザ・ダーク」と「アレックス」とパゾリーニ

  

「ダンサー・イン・ザ・ダーク」は喜劇で「アレックス」は悲劇です

「ダンサー・イン・ザ・ダーク」人生のベスト1映画です。ダントツで一位です。個人的な解釈になりますが率直に書きます。ズレてたら御免なさい。

それは彼女の防衛本能な訳ですよ。
「盲目」というハンディキャップが彼女をミュージシャンにした訳です。
しかも彼女のイメージするミュージカルはディズニーランドなものではなくて、自分の職場とかを舞台にした極めて現実的なものです。
詰まる所、彼女は克服手段としてミュージカルをイメージ(創作)する訳です。せざるを得ない立場なんです。息子がいるから。
息子がいなければ自殺するか自己憐憫に陥っていればいい。現実逃避してればいい。
しかし息子を救う為(むしろ責任を果たす為)、過酷な現実を生きなければならない。
生き抜く為に音楽を必要とする。過酷な現実に直面すると彼女は愉快なミュージカルをイメージする。そうやって現実を克服しようとする。
直面した現実が過酷になる程、苦痛が増す程、それに比例してイメージが増幅する。楽しさが増す。美しさが増す。
そういう構造の映画です。悲劇ではなく喜劇です、これは。

この映画って、よく「痛い」「辛い」「救われない」とかネガティブに言われがちなんですけど、それはちょっと違いますね。
「痛い分だけ気持ち良い」「辛い分だけ美しい」だと思います(しかも、ちゃんと息子救ってるし)。
監督もメイキングでそんな事言ってました。
同じく、メイキングで主演のビョークが「監督は苦痛ばかり描こうとしている」と皮肉ってましたが、わかってないな〜と。
この映画において苦痛を否定する事は、そこから産まれてくる作品を否定するのとイコールな訳ですよ(僕の勝手な解釈ですが)。
僕には苦痛の果てにある美の追求と、苦痛に立ち向かう人間の気高さを描いている映画にしか見えなかったですけど。
見終わった後にはとても清々しい気分になりました。

最近見たギャスパー・ノエの「アレックス」は悲劇です。
「美しい分、痛い」映画でした。
「時が全てを破壊する」というのが、あの映画の基本理念な訳ですが、これはとんでもない誤解です。
精神的な傷は時が悪化させます。はっきし言って、時は何も解決しません。
ましてや妊娠中にナイフで脅され、ケツの穴を犯され、顔面をアスファルトで潰されたアレックスの心の傷を「時間が破壊してくれる」なんていうのは、まずあり得ませんね。
あったとしても、それは一時的な忘却でしかない訳ですよ。
アレックスに残された救いの道はただ一つ。苦痛と直面し、それをミュージカルに作り変えるくらいしかないと僕は真剣に思っちゃうんですよ。
最も、僕はレイプされた事もないですし、盲目になった事もないのでよくわからないんですが。(まあ「アレックス」は暴力映画としては強烈でしたし、カルトな魅力を持つ映画ですが、僕は好きくないですね。同じ暴力映画でも「時計仕掛けのオレンジ」や「ありふれた事件」「ナチュラル・ボーン・キラーズ」の方が好きです)

「アレックス」はこれくらいにして「ダンサー・インザ・ダーク」に戻ります(長文駄文になってきたので、ピッチ上げて)。

ヴィジュアルも良かったです。カメラはブレブレだし、設定とか適当だし、レトロな雰囲気の割りにデジタルな感じがするし、何もかもデタラメで素敵でした。
そもそも、ラース・V・トリアーとビョークっていう組み合わせがミスマッチでグーです。
強いて難癖をつけるなら、終盤間際のテロップ。「彼女は死んだ訳じゃないのよ。だからガッカリしちゃ駄目!希望を持って!」みたいな胡散臭いテロップ。あれは蛇足だったな〜(ビョークのアイデアだと踏んでるんだが)。

でもそれだけですね。他はパーフェクトでした。本当にこれくらいパーフェクトなのも珍しいくらいパーフェクトでした。

おっと、それから。因みにビョークを否定している訳ではないです。彼女なくして、この映画は成立しないと思うので。ビョークも大絶賛です。演技も歌も。

「ドッグヴィル」に期待!(3時間オーバーはチト辛い!)

(2003・12・7狼)

「アレックス」に感じた“すがすがしさ”

狼さんという方の「ダンサー・イン・ザ・ダーク」の感想は自分がこの映画から受けた印象とはかなり異なるものなのですが、こういう見方もあるのかと思い、興味深いです。

この作品を悲劇ではない、あれはハッピーエンドなのだという人がいることを以前から、全くそういうものには見えなかった自分は不思議に思っていたのですが、そういう意見の人がどう見たのかの一端を垣間見たような気がします。
自分と異なる意見をいうのを読むのも面白いです。

でも好みではやはり僕は好きな感じの映画ではなかったのですが。(ある種の完成度はあることはもちろん認めます。)

それに対して、「アレックス」はそんなに優れた傑作だとかは思わないけど、映像のタッチは好きな感じで、正直、見ていてドキドキしっぱなしでした。

一切の物語を納得させるための作劇を放棄して、ありのままに人間そのものをじっと見つめようとしていている、ひたすら即物的に人間をとらえようとしているような映像だと思いました。
パゾリーニの映画を見ている時のように、裸の人間の魂に触れたような感触を受けました。

つまり、狼さんの文章を読んで思ったのですが、「救いの道」とか、そういう一切の作劇上の作り込みを廃して、人間とはこういうものなのだと生物としての本能的な人間の姿そのものをひたすら見つめようとしたところに僕は逆にすがすがしさを感じました。

ただこの手の映画として特に傑作とまでは思いません。
自分の好みには「ダンサー・イン・ザ・ダーク」より「アレックス」の方が合っていたということです。

これは反論というより、狼さんの文章を読んで自分と違うなと感じ、逆にそのことに(同じ映画でも全く自分とは異なる見方をする人がいるのだということに)興味をもって書き込みました。

▼以下補足(念のため)

「アレックス」にすがすがしさを感じたと書くと女性の方とかに嫌悪されるかもしれないけど、正直な気持ちです。
もちろん女性をレイプするのを見てすがすがしかったという意味ではなくて、この映画の作り方にすがすがしいものを感じたという意味なのですが。
でも人におすすめする気はもちろん全くないですけどね、この映画は。

(2003・12・7かねこ)

パゾリーニの凄まじいインパクト

「アレックス」は、かねこさんの言われる「監督がありのままの人間そのものをじっと見つめようとしている」というのはちゃんと伝わってきました。
ただ僕にはちょっと過激すぎるというか、生理的に受け付けなかったんだと思います。当然、レイプは犯罪ですし。

「パゾリーニ」は凄いですね。あの人、本格的に掴めないです。
「ソドムの市」しか観た事ないんですけど、その後の僕の映画ライフに凄まじいインパクトを残しました。
何て言っていいかわからないテイストなんですよ。
エロさとかグロさを感じないんですね。いや感じないんじゃなくて、感じるべきものと違う感情が湧いてくるというか・・・。
目っ茶目茶な映画なのに、むしろ神聖な映画を見ているかの様な訳のわからない気分に・・・。
いや〜、あれはちょっと特殊な体験でした。

(2003・12・8狼)