面白い映画教えます

ディズニー、エルロイ、ヘルゲランド

変な組み合わせを繋ぐ映画は「L.A.コンフィデンシャル」

ディズニー

先日、家で酒を飲みながら、子供が見ていたCSのディズニーチャンネルを一緒に見ていたんですが、長目の番組と番組の合間に、昔のミッキーマウスの短編アニメをやってまして、いい感じで飲んでいたせいもあるとは思うけど、ちょっとトリップしそうになってしまいましたよ。

なんでトリップしそうになったかというと、たぶん、キャラクターの動きの異常なまでの手数の多さが原因だと思うんです。
とにかくあまりにもめまぐるしい動きをするんで、それを見ていたら、めまいにも似た感覚を覚えてしまったんですよね。
しかも、そのめまぐるしい動きひとつひとつのタイム感がズレまくっている。
このズレっていうのは、極論を言えば洗練されていないことにつきるんでしょうけど、何ていうか、その、非生産的な動きなんですね。
運動量と、その結果として客に与える驚き、感動、面白さの質が見合っていない感じ。労力と効果が見合ってない感じ。
ハッキリ言ってしまえば、ムダな動き。

日本のアニメや最近のディズニーアニメの精緻かつ効果的なキャラクターの動きに慣れた目で見ると、もの凄く異常なものを感じました。5分とかだからいいけど、これを1時間見続けていたら間違いなく自律神経をやられるなと思いました。

それで思い出したのが、ジェイムズ・エルロイの「L.A.コンフィデンシャル」のこと。
この小説の中に、明らかにウォルト・ディズニーをモデルにしたと思われる人物が出てきて、彼が作ったアニメとそのキャラクターが、事件に大いにかかわっているいる設定がありました。
しかもかなりダークな位置付けで。

これから小説を読もうと思ってた人はこの一段落、ネタバレあるんで飛ばして読んでほしいんですが、殺人事件の背後に、ある男がいて、その男というのは、実はウォルト・ディズニー(をモデルにした男)の息子である、と。その息子は、小さい頃から狂気的な部分があったが、それに拍車をかけたのが、父親がアニメ王として成功する前、金儲けのために作ったポルノアニメ(動物キャラクターが出てくる)だった。彼はそのポルノアニメを浴びるように観てしまい、それ以後、完全に妄想と狂気の世界に突入してしまった。そして猟奇殺人鬼として成長してしまった。簡単に言うと、そういうシチュエーションです。

エルロイ

ミッキーの短編アニメを観て、やばい!トリップしそう!と感じたとき、真っ先に思い出したのが、エルロイの小説の中の上記エピソードだったんですね。
ダークサイドへの嗅覚が人並みはずれて鋭いエルロイのこと、ディズニーアニメが孕む狂気の匂いを嗅ぎつけ、それが小説のエピソードとして使えると踏んだんではないだろうか。
同時に、30〜50年代アメリカが映画や音楽を始めとする「芸能」で世界制覇を果たして行く過程の裏で何が起こっていたのかを暴き立てることが、エルロイの作家としてのモチベーションになっているのだから、アメリカン・ポップカルチャーの人工的明るさの象徴でもあるディズニーのダークサイドを描くことは、もう、たまらない誘惑だったんだろうなあと推測したんですがね。

小説の「L.A.コンフィデンシャル」のクライマックスには、ディズニーランドをモデルにした巨大プレジャーランドが重要な舞台として設定されていました。
カーティス・ハンソンによる映画化では、この巨大プレジャーランドランドでのエピソードはもちろんのこと、ディズニーを想起させる部分は全てバッサリ省略されていました。当然でしょうね。

ぼくは、映画版「L.A.コンフィデンシャル」を観る前にエルロイの原作を読んでいたので、ウォルト・ディズニーを想起させるパートを、どう処理するのか非常に楽しみにしていたんです。
公開前、エルロイ自身が、キャンペーンなどにも積極的に参加して、映画の出来にもの凄く満足していると発言していたので、期待がますます募ったわけです。
ところが、というか案の定というべきなのか、映画を観てみたら、“ダークサイド・オブ・ディズニー”というべき部分は見事なまでに“無かったこと”になっていました。
「エルロイ、ほんとに満足してるのかよ!?」と思ってしまいましたが、同時に“そこは無かったこと”にする、映画版脚本のバランス感覚にも唸ったものです。

政治的な配慮はもちろんあるのでしょうが、それよりも、“あの”部分を映画に盛り込むことで、映画自体が破綻するのを恐れたのだと思います。
まず、登場人物が増える。人間関係と事件の全容が複雑になる。メーンストーリーである警察内部の腐敗、そしてラッセル・クロウとキム・ベイシンガーのラブ・ストーリーの部分が目立たなくなる。
つまり、観客が理解しづらくなり、尺も長くなり、映画の肝やポイントもぼやける。
いいことなんにも無いぞ、と。そう考えて、カーティス・ハンソンは、“あの”部分をバッサリ切ったんだろうと思います。
プロデュースとシナリオどちらにも係わっているからこそできたことでしょう。

ぼく自身、一観客としては、破綻しててもいいから“あの”部分を観たかったという気持ちはあるんですが、こういうでっかいプロジェクト、最初からわかっていながら破綻には導けないですよね。マイケル・チミノじゃないんだから。

映画版「L.A.コンフィデンシャル」の脚本をカーティス・ハンソンと共に担当したのは、ブライアン・ヘルゲランド。
ヘルゲランドは、今、公開されているクリント・イーストウッド監督の話題作「ミスティック・リバー」のシナリオも書いています。「L.A.コンフィデンシャル」でアカデミー脚色賞に輝き、今回「ミスティック・リバー」でも同賞にノミネートされています。一見、王道凄腕ライターといった感じです。
しかし、このブライアン・ヘルゲランド、ぼくには引っ掛かりアリアリな人なんですよ。いい意味でなんですが。

ヘルゲランド

ヘルゲランドは1961年生まれ。彼が映画の世界で頭角を現したのは、まずホラーによってです。88年の「エルム街の悪夢4/ザ・ドリームマスター最後の反撃」が一応映画脚本デビューになってます。
これ、観てないんですがね。調べてみると、それ以前に「13日の金曜日」のTVシリーズの脚本や監督もやっているので、もともとはテレビの人かもしれませんね。
その後、ライタークレジットされているのが「ホラー・スコープ」(88年)「地獄のハイウェイ」(91年)。どちらも未見ですが、タイトルから想像するに見事にホラー路線ですねえ。

一気にメジャー感が出るのが、その次の作品。
リチャード・ドナー監督、シルベスター・スタローンとアントニオ・バンデラス主演の「暗殺者」。
これ、クレジットでは脚本がウォシャウスキー兄弟とヘルゲランドの3人になってるんですね。
どういうコラボレーションの仕方したのかわからないんですが、ぼくの推測では、おそらくオリジナル脚本=ウォシャウスキー兄弟、実際に映画にするに当たってのリライト=ヘルゲランドではないかと。
「マトリックス」観てのイメージでしかないんですが、ウォシャウスキー兄弟のホンって、複雑でわかりにくそうですよね。「暗殺者」はわかりにくさのカケラも無かったんで、ヘルゲランドが、プロデューサー&ディレクターのリチャード・ドナーに追い込みかけられて直したんではないかなと思ったんですね。

で、その実績が認められたのか一気にメジャー仕事が増えて、97年製作の作品では3本にかかわってます。
まず、前述の「L.A.コンフィデンシャル」。
それから「暗殺者」に続くリチャード・ドナー&メル・ギブソンのコンビ作「陰謀のセオリー」。
そしてもう1本が、その年きっての愚作を決めるラジー賞(ゴールデン・ラズベリー賞)5部門独占ケヴィン・コスナー監督・主演の話題作「ポストマン」。
この「ポストマン」で、ヘルゲランドはラジー賞脚色部門で栄冠に輝いてます。
すげえなと思ったのが、同じ年に「L.A.コンフィデンシャル」と「ポストマン」で、アカデミー賞とラジー賞、どっちも受賞するってこと。これがホントの賞総ナメってやつですよ。

さらに快進撃は続きます。
メル・ギブソンによっぽど気に入られたのか、リチャード・スタークの原作を映画化した「ペイバック」(99年)では脚色だけではなく、監督にも進出です。
ハリウッドのゴシップとかを読むと、ヘルゲランドは、監督としてはメルギブのお気に召さなかったようで、「ペイバック」の途中で降ろされ、メルギブ自らメガホン取ったとか、メルギブのヘアメークが監督引き継いだとか、色々言われてます。
単にメルギブの言うこと聞かなかっただけなような気がしますけどね。
でも「ペイバック」はけっこう面白いんですよ。なかなか小気味良い出来で。これオススメです。あんまり期待して観なかったせいもあるとは思うんですが「いやあ、これは拾いもんだなあ」と思ったものです。

「L.A.コンフィデンシャル」で既に共同プロデュースには名を連ねていましたが、「ペイバック」での反省を生かしたのか、次は本格的にプロデュース業にも進出。
「ロック・ユー!」という中世ヨーロッパを舞台にしたアクションを製作・監督・脚本、一人三役で撮っています。
これは観ていないのですが、面白いという評判を聞きます。ビデオ探しているんですが、うちの近所のビデオ屋に置いてないんですよね。誰か観ている方がいたら、感想をぜひ教えていただきたいです。

時期を同じくして、今度はクリント・イーストウッドからの引きが。
マイケル・コナリーのベストセラー「わが心臓の痛み」を映画化したのが「ブラッド・ワーク」です。
おそらく、イーストウッドは「L.A.コンフィデンシャル」を観て、原作モノ(特にミステリー系)の脚色で使えると見たのではないかと思います。
で、この仕事で見事イーストウッドのおメガネにかない、同じく原作モノの脚色「ミスティック・リバー」に続くわけです。

ヘルゲランドの面白いところは、アカデミー賞にノミネートされるような仕事をしながらも、ホラー魂を忘れていないところ。
つい先日、2004年の1月末に日本公開された「悪霊喰」でも製作・監督・脚本の一人三役をこなしています。
これは、製作途中からスタッフが事故死したとか失踪したとか、呪いの映画系として妙なところで前評判が立った映画です。久しぶりに劇場で観るのにピッタリの映画だな、よし行くかと思っていたら、アッという間に公開終了になってしまいました。

話が飛びまくってしまいましたが、ブライアン・ヘルゲランドは「L.A.コンフィデンシャル」のディズニーを想起させるエピソードをバッサリ切ることをどう考えていたのか。
個人的には、そこが非常に気になるところです。
どうもヘルゲランドはエグイもの好きのような気がしてならないんです。
だから、ディズニーを想起させる部分を残したかったんじゃないのかなと思ってるんですよね。完全に勝手な推測ですけど。
ぜひとも本人に聞いてみたいところです。

(オイカワ)

エルロイファンにおススメなのはリー・タマホリの「狼たちの街」

+++「ディズニー」+++

高校の時に「ファンタジア」をi-MAXに見に行ったんですが、ちーっとも面白くなかったんで以後一本も見ていません。恐らく、今後も見ないと思います(笑)。

+++「エルロイ」+++

「LA〜」の原作を読んだのが昔なので良く覚えてないんですが、全然意識してませんでした。「ディズニー陵辱」に関しては、オイカワさんの解説で100%納得です。恐らく、そうだろうな〜っていう気がしてきました。

エルロイが「LA〜」の映画の出来に満足してたというのは(僕の予想ですが)、単にわかり易く調理されたのが本人的に嬉しかったんだと思います。「僕の小説はプロットが複雑過ぎる上、登場人物が多いから映画に向いていない」とか嘆いてますし。実際、過去に映画化されたエルロイの映画(2本ばかし見た記憶があります)は全然パッとしない出来だったので、舞い上がったんだと予想します。

+++「ヘルゲランド」+++

オイカワさんと同意見です。僕も掴めないんですよ、あの人(狼レーダーも黄色信号が点滅してます)。「LA〜」「ペイバック」は僕も拾い物だと思ったんです。でも他の作品が「ポストマン」と「ロック・ユー」ですよね・・・んんんっ???「悪霊喰」って、そんなもんも撮ってたんですか?(一層、わからなくなりました)。で、再び「我が心臓の痛み」と「ミスティック・リバー」でクライムノベル路線に戻りましたよね?

恐らく、「ミスティック・リバー」ではっきりするかな〜と踏んでいます。最も、S・ペンが惚れた脚本なんで外さないとは思うんですが。

それから「わが母なる暗黒」映画化が本格化って、ま、マジっすか???監督は一体、誰すか!!!(最も、アメリカの映画化が本格化って怪しいんですが)

「ブラック・ダリア」のフィンチャーの映画化は僕も聞いた事があります。熱望していたのですが、最終的にデ・パルマですか・・・う〜ん嬉しいような、ガッカリのような・・・何か、既に完成作品が頭に浮かびます。
しかし「ブラックダリア」なら、本当に見ない訳には行かないです(って、隠れデ・パルマファンなので、何れにせよ観るんですが)。

デ・パルマについては後ほど。

エルロイ絡みで僕が見たのは「ブラウンズ・レクイエム」と「ザ・コップ」です。他にも一本ばかし見た記憶があるのですが・・・思い出せません。
何れにせよ、殆ど記憶に残ってないです(笑)。
むしろエルロイとは関係ないんですが、リー・タマホリの「狼たちの街」はエルロイっぽい・・・というか、もろにエルロイなのでファンにはお勧めです(このリー・タマホリが「ホワイト・ジャズ」を映画化するって噂もあったんですが、音沙汰ないです。K・サザーランドが「LA〜」をTVシリーズ化するなんて噂もあったんですが同様です)。

ブライアン・ヘルゲランドの「ロック・ユー」は未見です。観よう観よう思って、いっつもスルーするんですよね、あの映画。舞台は中世のヨーロッパだし、ハードボイルドな路線からロケンローなノリになってるし。音楽はいきなりクイーンだし(一番好きなバンドですが)。
その辺が掴めないんですよ、あの人。

(狼)

興味わきます「ブラック・ダリア」の映画化

「L.A・・・」でエルロイ知って、「ブラック・ダリア」を読み 「LAコンフィデンシャル」と「ホワイト・ジャズ」の文庫本購入しつつも それに先んじる「ビッグ・ノーウェア」がブックオフで見つからなかったがためにすべて放置している中途半端な読書人です。

「ザ・コップ」は未見ですが「ブラウンズ・レクイエム」は映画として好きです。
人物関係や背景など、1回観ただけではよくわかんなかったけど、 マイケル・ルーカーが良かった。( ヘンリー!!!)
あと私のお気に入り、ブラッド・ドゥーリフも出ているし。

「ブラック・ダリア」 ハードな物語ですね。
この複雑な小説をどう映画としてさばくのか、何にポイント置くのか、興味あります。
単なる猟奇ホラー映画にだけはしてほしくないんです。

(bellbell)