面白い映画教えます

インディアン・ランナー

悲劇を撮れる男

ローカルな出来事と神話的な物語が通低してることを見抜いている視点の鋭さ。
そしてそれを実際、作品に定着させる技術の確かさ。具象を普遍へ昇華させる手つきの鋭さとでも言おうか。
ショーン・ペンの監督デビュー作は、directorというより、authorもしくはartistの仕事だ。

役者としてのキャリアまで含めて考えると、1990年代というのは、ショーン・ペンのためにあったのではないかと思えてくる。

ジョン・カサベテスに捧げられてはいるが、おそらくそれはスピリットにおいてであって、作品自体は、カサベテスからの影響または共通点はさほど感じられない。
カサベテスは基本的にはオプティミストのような気がする。
どんなテーマで撮っても、ついつい笑ってしまうようなところがあるし。
しかし、ショーン・ペンはオプティミストではない。そしてそこがいい。

感情の埋蔵量の多いショットを撮れる、すなわち悲劇を撮れる作家だと思う。

(オイカワ)

魂を持ってる金持ちとは恐れ入った

いやーすごいっすねえ。マジで感動してしまいました。
ショーン・ペンが31歳の時に撮った映画なんですねえ。『インディアン・ランナー』。
大したもんですねえ。いやー恐れ入りました。もう12年も前の映画に今更ながらですが。

最初の10分ぐらいはですね、正直、大丈夫かなあ、夜中に観ても寝ないかなあ、何て思ってしまったんですが、とんでもなかったですね。
あのダメなどうしょうもない弟のフランクが出所するあたりからもう、目が離せなくなるんですね。もうあのへんからグーンと引き込まれました。
親父さん、チャールズ・ブロンソンなんですねえ。デニス・ホッパーも出てるし。個人的には、弟の恋人のパトリシア・アークレットと主人公の妻のサンディ・デニスがいいですねえ。
パトリシア・アークレットのデニムのショート・パンツ姿で弟のベッドの臭いを嗅いでいるショットと、サンディ・デニスが家の窓から外で土を耕してる夫を見ているショットがたまりませんでした。それから弟の股越しに撮られたパトリシア・アークレットのショットもグッときちゃいました。

しかし、何たって、あの弟ですねえ。
なんかヴィンセント・ギャロをもっとワイルドにしたカンジの。あの弟がねえ。
私事ですが、他人とは思えないんですよねえ。あのダメさが。まあ、あそこまでワイルドじゃあ、ないですけどね。私は。
あのメシ食ってて、パトリシア・アークレットのちょっとした言葉でムカついて、いきなりキレ出すとこなんかね。もう抑えられないんですね。幸せなのに、何かそれを素直に受け止められないといいますか。
まあ、そんなことは、私事なのでどうでもいいんですが。

あのラストの車から出てくる弟のね、あのシーン、あれはかなりグッときました。久々にこの間の『ワンダーボーイズ』のラストと同じくらいにこみ上げてくるものがありましたよ。いやーショーン・ペン、すごいっすねえ。

ハル・アシュビーとカサヴェテスともう一人誰かに捧げられてましたね。『インディアン・ランナー』。やっぱり、カサヴェテスを意識してるんですねえ。ただ、カサヴェテスとは違う何か、違う力というか、違う部分での力量を感じましたけれども。でも、カサヴェテスに敬意を表している。

いやーアメリカの役者は、スティーブ・ブシェミといい、ただものではないというか、大したもんですよねえ。
ただ法外なギャラをもらって豊かな生活を送ってるだけじゃない。魂がありますねえ。金持ちでなおかつ、魂を持ってる。大したもんですよねえ。
いやいや、恐れ入りました。

(おもてとしひこ)