最初のタイトルんとこからしびれっぱなし。
まず音楽の入れ方がむちゃくちゃカッコいい。絵とのシンクロのさせ方にゾクッ。
山崎努と大地喜和子がセクシー。横山リエまで出てたんで個人的には歓喜。好きなんですよ、下品な感じが。
勝新は非常に分裂してる。対象にべったり肉薄したいという欲望と、その反面、肉薄するのを恐れる部分。それから、今、画面に映っているのは○○に見えるだろうけど、でもそうとも限らないじゃないか、決めつけるなよ△△かもしれないぞ、という茶目っ気。
かなり多くのシーンで鏡やガラス窓を使っている。鏡や窓でワンクッション置いてから人物を捉えたり、窓ガラスを通して見える外と、窓ガラスに映る内を同一画面で切り替えたり。
それが、理論的裏付けがあるような種類の実験じゃなくて、あくまでも勝新の体質に裏付けられたものであるところが魅力的だった。無意識の作為とでも言おうか。
勝新扮する刑事には「正義」とか「悪」とか「嫌悪」、あるいは「男の意地」でもいいが、そういった1本筋が通ったものが無い。
モチベーションが「正義」のためとではもちろんないし、警察やめるのも「嫌悪」や「男の意地」のためではないし、かといって「悪徳刑事」かと言うと、そこまでのものはない。「悪徳刑事」だったらヤクザともっと癒着したりするだろう。
いろいろうるさいこと言われるし、好き勝手できないからめんどくさくなってヤケで警察辞めましたみたいに見える。捜査中に容疑者の愛人と寝ちゃうのも、ちょっと色っぽい女だし、お誘いあったからゴチになりますって雰囲気だし、殺人にしても、山形勲から見くびられたこと言われて(というよりある意味図星だったから)、むかついたんで埋めちまえって感じだ。
なおかつ、そういうキャラ設定に対する説明やエクスキューズが全く無いので、余計わかりにくい。
この映画の中では勝新が思いのほか影が薄い気がした。周辺の人物、山崎務や前田吟や大滝秀治の方が印象に残る。筋通ってなくて、説明もないってあたりに要因があるのかなと思った。
だから、ごく一般的な脚本の作り方や演出方法から考えると、ツメが甘い失敗作ということになるのだが、見てる間はその失敗が失敗という気がしない。むしろ魅力になってる。不思議な映画だ。
ものすごく単純に考えると、勝新は決めつけられたり、枠にはめられたり、とにかくきゅうくつなことが単に嫌いなだけなんじゃないか。そういう自分の体質や気分に最初から最後まで忠実に映画を作った。それをキャラ設定、コンテ、撮影方法、編集に至るまで、すみずみまで徹底したら、こんな映画になったのではないか。
だとするとホント、偉大なプライヴェートフィルムってことになる。
勝新の『顔役』はスゴかったっす。
あれを1971年に作っていた勝新太郎、恐るべき映画作家っす。
テレビドラマ『警視−K』はあれの延長戦だったんすね。
実は個人的にはちょっとやたらとアップが多くて徒に分かりにくくしているような手法はどうなのかな?と引っかかりを覚えるところはあったのですが。(北野武映画もそういう点では個人的にはちょっと苦手なところもあるので。すみません)
でも全体を通すと、やはりちょっと他に類がないような不思議な映画でした。1970年代の映画というより時代とかを超越した作品かもしれません。
オイカワさんの『顔役』の指摘(※)を読んでふと思ったことを書き記しておきます。
>「顔役」は、確かに作為だらけですが、その作為が勝新の無意識から出てるような気がしました。頭でガッチリ考えた作為ではなく、勝新の無意識や体質に根ざしたもので、そこが魅力的でした。
ということなのですが、たとえば足の指のアップとか禿げた頭のアップとか、こういう人物の身体の一部をアップにするのはそういう「体質」みたいなものを漂わせようという狙いでしているものなのではないか?とちょっと思いました。
>勝新は非常に分裂してるんですね。対象にべったり肉薄したいという欲望と、その反面、肉薄するのを恐れる部分。
この勝新の分裂というのは、勝新の刑事が正義の側にいるのか悪の側にいるのかが分からないというところから来ているのかもしれないとも思います。
ここでの勝新刑事は組織の歯車になっている人間に対して疑問をもっているようで、警察手帳を投げ付けて刑事をいったんやめてしまったりするけど、それでは正義感から人間が組織の歯車になっていることを嫌悪しているのだろうか?というと、捜査の途中で容疑者の女と寝ちゃったり、ラストは殺人までしてしまう。これでは主人公の勝新の側が悪人のようにも思える。
この主人公は正義と悪の両面に分裂している言えるのかもしれないとちょっと思いました。
ただこの映画が、組織への反発というのがテーマなのだとすると、ちょっと気恥ずかしい話かもしれないと思います。この基本的なストーリーを他の監督、役者でオーソドックスに撮ったらかなり気恥ずかしい映画になるような気がする。(ひどい言い方をして、すみません。)
でも勝新がやると魅力的な映画になっていることが不思議な気がします。
良かったです。
役者が印象に残ります。
今度の自分の作品は、全編、揺れるような手持ち撮影を検討していたのですが、『顔役』見て、いいな……と思ったのですが、自分の作品としては、コレみて、ソレを辞めました。笑