“面構え系”映画の佳作に思いがけず出合えたので非常にうれしかった。
まあ、この映画が面構え系映画の傑作に成り得た理由の50%はサミュエル・L・ジャクソンにあるだろう。監督を問わず、この男にカメラを向ければ誰でも面構え系映画が必ず撮れる凄い役者、それがサミュエル・L・ジャクソンだ。
残りの50%は、J・T・ウォルシュとデビッド・モースとジョン・スペンサーにある。
ジャクソンとこの3人がいるからこそ、ケビン・スペイシーが引き立ったと断言するとスペイシーのファンには怒られるかもしれないが。
ストーリー展開と演出はかなり荒っぽいが、交渉人という職業にスポットを当てたのも成功の要因だろう。
さてこの映画の中で重要な役を演ずるJ・T・ウォルシュ。彼は1998年に54歳で急逝した。
この映画は最晩年の出演作ということになる。
今思うと、自分が90年代のアメリカ映画に執着があるのは、もしかしたらJ・T・ウォルシュがいたからかもしれない。
いかにも冷たい目つきで、その巨体から卑屈さをにじみ出させながら“知能犯的ワルで小心者”を演じ続けたJ・T・ウォルシュ。
この不在は大きい。ウォルシュの代替は利かないような気がしている。
地位や立場がそれなりに高い悪徳公務員系・弁護士系の役をやらせたら、ウォルシュの右に出る者はいなかった。
その死後、アメリカ映画の新作を観る楽しみがかなり減った。どんなに小さな役でもいいから、あの顔をあの姿を見せ続けてほしかった。
本当の遺作は、たぶん『カラー・オブ・ハート』になるのだろうが、あれが遺作ではあまりにさびしすぎる。
『交渉人』、そして97年制作のTV映画『HOPE/愛が生まれる町』。この2本こそが彼の真の遺作にふさわしい。
実際そう記憶することにしている。