何度見ても、ラスト30分はすごい。
特に、山田五十鈴演じる奥方が死産するあたりから後。
助けを求める悲鳴にしか聞こえない三船の高笑い。
土ぼこりを舞い上げるすさまじい風、そしてその音。
あまりにも原始的なので笑いそうになりつつ怖い、ご乱心の殿がもののけたちと会う森の場面。
山田五十鈴の狂気の演技・・・これは本気で怖い。
霧の中を森が動いて城に近づいてくるシーンのスペクタル。
雨あられと突き刺さる矢。ここは掛け値なしに映画史上に残る名場面。
そして消える蜘蛛巣城。
クライマックスの名場面、“矢”のシーンは、わかっていても驚く。こんなに凄かったか!と。飛んでくるタイミングとその数、三船の演技、あと何よりも音。すべて完璧に計算されている。
この“矢”の直前の森が動くシーンからエンドマークまでの10分くらい、個人的には今までに見た全ての映画の中で、最も興奮したシーンかもしれない。
黒澤は志の高さみたいなものもやっぱり凄い。「マクベス」の映画化であるこの「蜘蛛巣城」のほかにも、シェークスピアなら「乱」が「リア王」。あと、ドストエフスキー、ゴーリキも、それぞれ「白痴」と「どん底」で映画化。日本では、なかなかこういうのを、映画化しようする人いない。志や野心の大きさみたいなものは、ちょっとマネできない。
ただ、黒澤の場合、絵にした時の迫力が突出してしまって、原作の持つテーマを伝えられているかというと疑問符がつかないわけでもない。「蜘蛛巣城」にしても、スペクタクルなところが凄すぎて、えーっとどんな話だったたっけ?という感じもちょっとする。
そうは言っても、この「蜘蛛巣城」、やっぱり黒澤のベスト(の1本)だろう。