面白い映画教えます

裏切り者

ある意味古風な“母もの映画”の傑作

90年代アメリカ映画最大の傑作「リトル・オデッサ」をデビュー作として20代半ばで撮ってしまったジェームズ・グレイの2作目。
期待が大きかったので、最初に観たときは、さすがに上手いがやっぱりああいう鮮烈さは無いな…などと思っていたのだが、観直したら、そういう偉そうな感想は、この映画の素晴らしさを何にもわかってないバカが言うことだった、と思わず反省してしまった。

胸かきむしられるような傑作だ。

90年代後半以降のスターである主役3人(マーク・ウォルバーグ、ホアキン・フェニックス、シャーリーズ・セロン)の親に、70年代スター3人を配する妙と併せ、まずは役者が見事である。
既に色付いた(仲代達矢的な)役者から思いもしなかったイメージを引き出す上手さ。
ジェームズ・カーン、フェイ・ダナウェイもさることながら、エレン・バースティンが特筆ものだ(「リトル・オデッサ」の時は、ヴァネッサ・レッドグレーヴとマクシミリアン・シェルだった)。

魅力を数え上げればキリがない。
バースティン演じるところの“病弱な母親像”の鮮烈さ。「リトル・オデッサ」から一貫しているある意味古風な“母もの映画”的側面=そしてそこから生まれくる叙情。
映画の造りは明らかに悲劇なのに、クライマックスの談合シーンで突如醸し出される喜劇的雰囲気。
シャーリーズ・セロンとそのメーク=自らを扱いかねているような若い女の生々しさ。
マイノリティ(人種的)へのスポットの当て方。

ジャンル固定化の回避を目論むかのごとく雑多な美点を共存させつつ、トーンの統一をも達成している。

これはちょっと無いんじゃないと思われがちな邦題がついているが、アリだと思う。
原題の即物的とも思えるそっけなさの精神は継承してるタイトルかな、と。

あと、個人的にはトーマス・ミリアンの出現にものけぞった。

(オイカワ)